【K-BOOK振興会だより】ゾンビとの死闘を繰り広げる人々の群像劇小説から、日本統治時代に生きた女性たちの姿を描いた人文書まで幅広く紹介

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K-BOOK振興会便り  2024年9月号        http://k-book.org/
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◆◇今月のTOPIK◇◆

●イベント情報●
9月25日(水):【チェッコリ/会場】
チェッコリ読書クラブ:テーマ本は『魔法少女はなぜ世界を救えなかったのか?』(ペク・ソルフィ、ホン・スミン 著、渡辺麻土香 訳)
モデレーター:「双子のライオン堂」の店主・竹田信弥
https://peatix.com/event/41018659月28日(土):【文化センター・アリラン/会場+オンライン
アリラン・ブックトークVol.11
『朝鮮植民地戦争-甲午農民戦争から関東大震災まで-』
ゲスト:愼蒼宇
https://arirang-booktalk11.peatix.com/

◆◇日本語で読みたい韓国の本◇◆

小説 『スロー、スロー、クイック、クイック(슬로우 슬로우 퀵 퀵)』
―――――――――――――――――――――――――――●ゾンビとの死闘を繰り広げる人々の群像劇

著者は映画『事故物件 歪んだ家』の原作者であるチョン・ゴヌ。
不法操業をしていた中国の漁船に出動した海上警察が、無惨な死体と化した船員たちを目撃する。
虫の息だったそのうちの一人が中国語で「逃げろ」と言い残して息絶えるが、突然生きかえり襲ってきたことで、警察が皆ゾンビとなってしまう。
そのうちの一人が海に落ち、ヨンセンド(永生島)へ辿り着く。その頃ヨンセンドでは大学の放送サークルの学生たちを迎える準備に追われていた。
到着した学生と島の老人たちは揉めており、村長がなんとか体裁を取り繕うとした矢先、ゾンビが現れ島民たちもそして学生たちも次々とゾンビ化していく。
生き残った者たちは助け合うが、自分勝手に動く者や裏切る者もいる。最後には島を脱出するためゾンビたちをなぎ倒しながら船着場へ向かうが、苦戦する生き残り一行。
そこで突然一人の学生が自ら囮となって皆を逃がす。無事船に乗り込む一行であったが、船の持ち主である男が他の者に運転を任せ走り去ってしまう。
島を離れる彼らが最後に見たのは、ゾンビになった愛する妻と踊るようにぐるぐる回る船の持ち主の姿だった。
https://k-book.org/yomitai/240805/

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エッセイ 『とにもかくにも、アメリカドラマ(아무튼,미드)』
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●『小さな町』の著者ソン・ボミ初エッセイ、アメリカドラマの魅

「私」を創りなす世界、「私」が創る世界を紹介するエッセイシリーズ「とにもかくにも」の28番目の作品、アメリカドラマ編。
ドラマで描かれる各登場人物の人間関係や人生は作られた幻想の世界の話ではなく、どこか欠点がある人間的且つ現実的なもので、
つい自分の姿と重ね合わせてしまう、そんな部分に筆者ソン・ボミはアメリカドラマの魅力を感じたという。
本書ではThe OfficeやBreaking Badなどのアメリカドラマ13作品が登場する。単なるドラマの内容紹介ではなく、
そのドラマを見始めたきっかけや、登場人物に関する話が綴られている。
https://k-book.org/yomitai/240819/

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人文 『変身を重ねる女性たち(변신하는 여자들)』
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●日本統治時代に生きた女性たちの姿

日本統治時代に生きた8人の女性知識人たち。彼女たちの人生を自叙伝という形で綴る。まだ女性の社会進出が今のように容易ではなかった時代、
しかも日本の統治下という状況で自分の場所を得るためにもがき続けた彼女たちの経歴は、出版関係者、俳優と小説家、詩人、総長と特使、演説家、医師、官僚と実に華々しい。
現代においても簡単には手の届かなさそうなその位置を彼女たちはどう手に入れたのか。その多くは女性として家庭に入るという選択肢を捨て、
社会進出を果たすために人生の全てを掛けている。自由に思想を語れない中、親日というレッテルを貼られながらも自分の大志を成就させるために手段を選ばない姿、
もしくは親日を拒み、日本から祖国を開放するために海外を駆け回るその行動力、エネルギーには目を見張るばかりだ。
そして女性が社会進出するうえで宗教がとても大事な役割を持っていたことも興味深い。そんな彼女たちが自叙伝の中で描いた自身はどんな姿だったのか。
自叙伝という形を通じて彼女たちが伝えたかったもの、伝えたくなかったものを読み解いていく。
https://k-book.org/yomitai/240826/

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◆◇日本語で読める韓国の本◇◆

『逆行者 お金 時間 運命から解放される、人生戦略 』(ジャチョン/著、藤田麗子/訳、CCCメディアハウス)
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「30代前半で経済的自由を手に入れた事業家で あり、“逆行者”シンドロームを巻き起こした韓国 のベストセラー作家。
YouTubeクリエーター。」の肩書きをみて、少しおののきながらも本を開いてみると、やはり物事を成し遂げた人ならでは強さと柔軟さもまた感じながらグイグイと読まされてしまいます。
訳者の藤田麗子さんから、K-POPアイドルグループ「HIGHLIGHT」のメンバーがYouTubeで紹介していた本書のコメントとともに、推薦のメッセージを頂戴しました。
https://k-book.org/yomeru/240801/

◆◇ 韓国の出版・本屋事情 ◇◆

教保文庫、7月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)
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韓国でシリーズ累計110万部を突破した『달러구트 꿈 백화점』(邦訳版『夢を売る百貨店』鈴木沙織訳、文響社、2022)の著者イ・ミイェの新作小説が5位にランクインしました。
また、キム・エラン、キム・ヨンスなど人気作家5名によるアンソロジー『음악소설집(音楽小説集)』や、キム・スムの『오키나와 스파이(沖縄スパイ)』など
新作が次々に刊行されて、注目を集めています。
https://k-book.org/publishing/20240806/

 

教保文庫、7月の月間ベストと注目の新刊(エッセイ)
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キム・フンの新作エッセイ『허송세월(虚送歳月)』が今月も1位をキープしています。
注目の近刊では、『詩と散策』(橋本智保訳、書肆侃侃房)で知られるハン・ジョンウォンのエッセイを紹介しました。

https://k-book.org/publishing/2024080802/

◆◇8月のK-BOOKらじお◇◆

#109 自分を見つめ直すきっかけをくれる『ホール』、マンションを通して社会問題を考えさせられる『ソヨンドン物語』など|わたし、これ読みました
https://k-book.org/news/radio_109/

#110 『韓流ブーム』から見えるのは日韓の交流の歴史である -吉野太一郎さん |わたし、これ担当しました
http://k-book.org/news/radio_110/

#111 北朝鮮へのイメージが変わる、みんなにおすすめしたいエッセイ-岡裕美さん(翻訳者)|わたし、これ訳しました
http://k-book.org/news/radio_111/

#112 個人の時代に必要な力をつける2冊とソウルの公共の本屋さん|ソ・ハナの韓国の本、ウロウロてくてく
http://k-book.org/news/radio_112/
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__おしまいに____________________

『中国現代詩人文庫』(土曜美術社出版販売)を読んでいます。1巻から5巻まであり、著者はみな中国朝鮮族の詩人です。
生活する土地での苦楽の詩、遠い先祖の地に思いを馳せる詩など、テーマは様々。『金昌永詩集』には「西塔15―詩人白石(ペクソク)を偲びながら」という、
満州を彷徨った白石に移住民の自分を重ねる詩もあり哀切が心に沁みました。(運営委員:五十嵐真希)

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発行:一般社団法人 K-BOOK振興会
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