●本書の概略
『私は地方大学非常勤講師だ』『代理社会』(いずれも未邦訳)などで韓国社会の若者の厳しい現実を描いてきたキム・ミンソプが、自らの人生と漫画・ウェブトゥーンを重ね合わせながら、現代社会を読み解く評論的エッセイである。
本書では、『スラムダンク』『ドラゴンボール』『ミセン』『神と共に』『ユミの細胞たち』など、日韓で広く親しまれている漫画・ウェブトゥーンを題材に、「告白」「身振り」「つながり」という三つのキーワードから人生を考察する。
第1部「告白」では、作品を通して自らの挫折や弱さを率直に語る。研究者として将来に悩み、非正規労働者として生きた経験を漫画の登場人物に重ねながら、「自分を見つめる勇気」を描く。
第2部「身振り」では、若者を取り巻く就職難や格差、労働問題など韓国社会の構造的課題を、漫画を手掛かりに読み解く。個人の努力だけでは解決できない社会の歪みに鋭く目を向ける一方、作品が読者へ送る小さな希望にも光を当てる。
第3部「つながり」では、恋人、家族、職場、作家と読者など、人と人との関係性について考える。現代社会では失われがちな「連帯」の大切さを説き、他者とつながることこそが人生を支える力になると結論づける。
漫画評論でありながら、自伝的エッセイであり、同時に現代韓国社会論でもある一冊である。
●目次
序文
第1章 告白する
第2章 身振りする
第3章 つながる
●日本でのアピールポイント
本書は、「漫画評論」という枠を超え、漫画を通して現代社会と人生を語っている点である。
取り上げられる作品には『スラムダンク』『ドラゴンボール』など日本発の名作も多く、日本の読者にとって親しみやすい。それらを韓国社会の現実や著者自身の人生経験と結びつけて読む視点は新鮮であり、「同じ作品でもここまで違う読み方ができるのか」という発見を与えてくれる。
また、『ミセン』『ユミの細胞たち』『神と共に』など、日本でもドラマ化や配信サービスを通じて知られる韓国ウェブトゥーンが多数登場するため、韓国カルチャーに関心のある読者にも訴求力が高い。
内容は韓国社会論でありながら説教臭さはなく、漫画という共通言語を媒介として「働くこと」「生きること」「人とつながること」を語るため、日本でも幅広い世代の共感を呼ぶだろう。
日本では、ヤマザキマリの漫画エッセイや、中条省平・夏目房之介らによる漫画評論、あるいは『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』のように社会と個人を軽やかに結びつけるエッセイを好む読者層にも受け入れられると考えられる。また、韓国文学・韓国社会に関心を持つ読者にとっても格好の入門書となる。
(作成:横田 明)

