多彩なユソン(별별유성)

原題
별별유성
編者
ストーリーパプ作家協働組合
著者
キム・ビョンホ、ソン・キョンソプ他4名
出版日
2024年10月11日
発行元
みんなの本
ISBN
9791192919157
ページ数
185ページ
定価
15,000ウォン
分野
小説、人文エッセイ

●本書の概略

韓国のほぼ中央に位置する都市・大田(テジョン)にある町、儒城(ユソン)。古くから温泉地として親しまれてきた一方で、KAIST(韓国科学技術院)や電子通信研究院(ETRI)など国家的な研究機関が集まる「科学の町」としての顔も持つ地域だ。
本書は、2024年にユソンで開催された第8回韓国地域図書展を記念して制作されたユソンを紹介する書籍で、ユソンの八つの素材をもとに、八名の作者が小説・童話・エッセイへと自由に書き下ろした作品を収録している。観光情報こそないものの、土地の歴史や地理、伝説に焦点を当て、読み進めるほどにユソンへの興味が自然と深まっていく内容となっている。

●目次と概略

はじめに
#1 鶴下洞(ハッカドン)で会った宇宙人
ユソンに降り立った自称宇宙人と記者のインタビューで展開するSF小説

#2 星ばたけのおはなし
ユソンの山「星峯(ピョルボン)」と麓の「星田(ピョルバッ)」を背景に、主人公の動物たちが自然から「牽制」と「均衡」を学ぶ童話

#3 石に刻まれた解放の喜び―皇国臣民の誓詞碑が解放記念碑となった来歴
古い写真から、ユソン小学校の「解放記念碑」は植民地期の「皇国臣民の誓詞碑」を彫り替えたものと判明した。その発見をもとに創作した、植民地期の小学生が主人公のフィクション小説

#4 革命を夢に挿した鄭道伝のアカヤナギ
李成桂とともに高麗を終焉させ朝鮮王朝を築いた鄭道伝(チョン・ドジョン)。そのチョン・ドジョンが地面に挿した馬追鞭が、やがて根づいて成長したと伝えられるアカヤナギの言い伝えを題材にした物語

#5 ストン谷と会話しよう
都心近くの休養地「ストン谷国立公園」に伝わる伝説を集め、再構成したエッセイ

#6 テジョン国立顕忠院に埋葬された人々
パッチギ(頭突き)王と称され日本でも活躍した経歴を持つプロレスラーのキム・イル(日本名:大木金太郎)、韓国初の映画監督ナ・ウンギュなど、テジョン国立顕忠院に埋葬されている人々の人物伝

#7 さいはて、その向こうの記憶
テジョン最北端の自然豊かな村「クムタン洞」を舞台にしたミステリー小説

#8 チョボンが出会ったユソン温泉―1930年代の小説に描かれたユソン温泉―
蔡萬植(チェ・マンシク)の小説『濁流』の描写を手がかりに、当時のユソン温泉を読み解くエッセイ

●日本でのアピールポイント

とどまるところを知らない訪韓需要は、これまでソウルに集中していた旅行者を地方へ押し広げている。韓国の多様な魅力を求める旅行者が増え、地域色の濃い地方都市への注目が高まる今、地方空港の国際線拡大も追い風となり、この流れはさらに加速していくだろう。
本書は、まだ日本であまり注目されていないテジョンの「ユソン」を、歴史・文化・人々の営みから描き出す一冊である。地域を紹介する本ではあるが、ガイドブックとは異なり、地域の物語を通して土地の姿を深く掘り下げる構成が特徴だ。本書の「はじめに」には「栄養豊富なビビンバのような本を作ろうと知恵を出し合った」とある。目新しさや派手さはないが、さまざまな具材が調和して芯のある味を生むビビンバのように、ユソンという土地の深みをじっくりと伝えてくれる。
韓国人気も成熟しつつあるいま、「浅く広く」から自分好みの韓国を「深く」知りたいと思う人も増えてくる頃ではないだろうか。そのような需要に応える一冊だ。

(作成 高上由賀)

キム・ビョンホ
1998年「作家世界」詩部門新人賞を受賞。詩、小説、散文、エッセイなど、幅広く執筆。詩集『体で歌う恋の歌』、化学エッセイ『科学人文学』など多数

ソン・キョンソプ
韓国文学創作所代表。出版、コンテンツを企画。テジョンが好き

ユ・ハジョン
児童文学家。韓国の児童文学賞であるヘアム児童文学賞(童話部門)韓国アンデルセン賞(童詩部門)受賞。『雲のおへそ』など多数

チョン・ドクジェ
詩、散文、ルポ、放送原稿などを執筆。詩集『歯磨き粉を迎えに来た歯ブラシ』他多数

チョン・ヒョヌ
「月刊トマト」客員記者。書店「ククチョルチョル」店主

チョ・ヨンヨ
神話研究者。ストーリーパプ作家。詩集『後ろ向きに歩く女』 (作品はいずれも未邦訳)