●本書の概略
どんな困難も、目を背けずに仲間と力を合わせれば解決できるのだというメッセージが伝わってくる物語。
幽霊を見ることのできる少女ミジュ。幽霊のせいで大ケガをしたことをきっかけに、母親の地元であるチョンホ村に引っ越す。14歳以上の男女は会話をしてはいけないという謎の決まりがある村だ。そして村で出会ったヨンヒから、この村には仙女様がいて、村人の願い事を叶えてくれているのだと聞かされる。
ミジュはヨンヒが所属しているオカルトサークルにも加入する。その歓迎会として廃病院で肝試しをするが、それ以降ミジュは村長とナンジという巫女の夢を見るようになる。ナンジは自分が置いたお守りを壊して結界にヒビを入れれば力が戻り、自分を殺した村長に復讐できると話す。
ある日ミジュが登校すると、ヨンヒが海外にいる家族と暮らすことになったと聞かされる。しかし後日、ミジュに匿名の手紙が届く。そこにはヨンヒが今年行われる儀式で仙女様が乗り移る器になること、そのために村長らにさらわれたことが書かれていた。手紙の内容とナンジの話をサークルのメンバーに話したミジュ。ナンジのお守りを壊せば、彼女が村長に復讐し、ヨンヒを救えるはずだという結論にたどりつく。しかしお守り探しは難航し、1つは破壊できたがその後はうまくいかず。そんな時、ナンジがミジュの夢に出てきてお守りの位置を教える。
儀式当日、ミジュがヨンヒを助けに行く。また、他のサークルメンバーはお守りを壊しに行く。お守りを壊すとナンジの力を借りて仙女が目覚め、自分を利用してきた村の人々を惨殺していく。ミジュとヨンヒは、2人を待つ友人たちのもとへとひたすら走る。
●目次
・プロローグ
・おかしなチョンホ村
・エピローグ
●日本でのアピールポイント
まだ邦訳された作品はないものの、著者は2023年に『京城夜三更』が“蒸し暑さを吹き飛ばすオーディオブックベスト10”に選ばれるなど、実力には折り紙付きのホラー作家だ。物語の中に信仰的な要素を加味することを好む作家で、本作でも仏教の弁財仙女が重要な要素として登場する。日本で公開された韓国のホラー映画の中には、『哭声』や『破墓』など、信仰的要素が含まれている作品も多々見受けられる。そういった韓国ホラー映画ファンにもおすすめしたい作品だ。
本作ではミジュが友人に心を許し、力を合わせて困難に立ち向かい、自身の問題からも逃げずに向き合えるようになるまでの成長を描いている。しかし著者が社会派ホラーを得意とする作家であることを知ると、また違った見方もできるかもしれない。児童書のようで実は奥深く、子供から大人まで楽しめる作品である。
(作成:永田愛)

