光が導くところへ(빛이 이끄는 곳으로)

原題
빛이 이끄는 곳으로
著者
ペク・ヒソン
出版日
2024年8月21日
発行元
ブックロマンス
ISBN
9791193937198
ページ数
360ページ
定価
18,800ウォン
分野
小説

●本書の概略

今を時めく人気建築家がパリでの勤務時代にたくさんの邸宅をめぐり、その家にまつわる思い出を聞き出して書き溜めてきたものを、フィクションとして再構築した初のミステリー作品である。発売後2週間で増刷され、韓国の大型書店、教保文庫の週間ベストでは、ハン・ガン作品が5位までを占める中、小説部門7位をキープしている(2024年11月末現在)。

パリの建築事務所で働くルミエールの元に、高級住宅地であるシテ島に格安物件があるという連絡が入る。古く立派なその邸宅は普通のサラリーマンには到底手の出せないものだったが、自分が建築家であることから選ばれ、スイスのルツェルンに入院中の家主に会いに行くことが購入の条件だった。
早々休暇を取ってルツェルンに向かうと、家主ピーターが入院中の療養型病院は、中世の修道院を改築した建物で父親が設計したものだった。その美しさに魅了され建築家としての好奇心も手伝って、ピーターの望み通り建物に隠された秘密を探ることになる。到着した日に太陽の光が織りなす美しい光景を目にしたルミエールは、光の導くところをヒントにピーターの父親とその愛人が記した日記帳を見つける。
パリに戻ったルミエールは、病院の謎を解き日記を見つけてくれたお礼に、無料でシテ島の邸宅を譲るという連絡をもらう。その邸宅でもピーターと父親、愛人と思われた女性についての秘密を明らかにしたルミエールは、再びルツェルンに向かい、ピーターに真相を話して父親の遺言通りシテ島の邸宅に引っ越すように勧める。
15年後、シテ島の邸宅にはピーターと娘家族が暮らしていた。久しぶりの訪問で最後の謎も解き明かされる。

●目次

01 私の人生に予告なしに訪れた変化
02 変わった家主、そして決心
03 変わった病院と彼ら
04 閉ざされた秘密
05 秘密が待っていた人
06 アナトール・ガルニア
07 同じようで違う二つの日記
08 続く秘密
09 死と生の境界にたつ空間
10 蘇る家
11 記憶をとどめた空間
12 ラザール・ガルニア
13 元の場所へ
14 思い出

作家紹介

●日本でのアピールポイント

タイトル通り読者は光に導かれながら、主人公と一緒に謎解きを体験できる。建築のプロが描く建物の細部は手に取るように伝わり、またマリアージュの紅茶のエピソードなどもあり、建築に興味があるなしにかかわらず楽しめるのではないか。チャプターごとの扉のイラストは作者が描いたもので、パリ時代に建物の話を聞かせてくれた人たちだけに分かる秘密の仕掛けらしい。読み始めたら最後までページをめくる手が止まらないほどのストーリー展開は圧巻だ。ペク・ヒソンは次回作で韓国を舞台にした『光が導くところへ』を構想中だ。出版が待たれる。

(作成:のざわみさを)

ペク・ヒソン
作家・建築デザイナー。世界的に有名なフランスの建築事務所、アトリエ・ジャンヌーヴェルをはじめ、フランスで10年余り建築家として勤務。2010年32才の時に、フランスの若手建築家に贈られる〈ポール・メイモン賞〉をアジア人で初めて受賞。現在はソウルでKEAB建築事務所の代表を務める。「記憶をとどめた建築」をモチーフに、人々の思い出や愛で完成される空間を作りだしている。他に、エッセイ『幻想的な考え』がある。