●本書の概略
ハルマン(할망)とは済州島の方言で、「おばあちゃん」の意。毎日部屋で横になり、窓から見える隣の家の屋根だけを見つめるハルマンに、ある日、孫娘は声をかける。「ハルマン、やりたいことはないの?」「ないよ。全部したよ」「行きたいところはないの?」「海にはもういちど行きたいけどねえ…」。若い頃、海女さんだったハルマンは誰よりも長く息を止められたという。
季節は晩秋から冬に向かう時期。風さえ吹かなければまだ暖かい1日だ。孫娘は車椅子を押しながら、ハルマンと一緒に海へ出かける。
●日本でのアピールポイント
済州島で生まれ20年の月日を過ごした作家が、自身の故郷とハルマンを想って制作した絵本です。自然豊かで、四季ごとに違った景色を見せる済州島。紅葉も終わり、だんだんと寒くなっていく季節も、慈しみをもってあたたかく丁寧に描かれているのが特徴です。
何十年も海女さんとして元気に働いてきたハルマンは、今では足腰が弱って車椅子でないと外出できません。そんなハルマンが久しぶりに冬の空気を感じたときの表情に胸を打たれます。長い間、人生を刻んできたハルマンの、強くてやさしい顔。国や育った環境は違えど、きっと読者も自分の祖母を思い出すでしょう。
(作成:黄理愛)