●概略
現代社会においては誰もが誰かを助けたり助けられたりするされることが多いだろう。近年、急速な高齢化の進行、コロナ流行による介護労働力の不足への拍車は、韓国でも話題だろう。そんな状況を打開するため、介護費支援、介護労働者の処遇保障などの改善案が提示されることが繰り返されるはずである。でもそれだけで本当に状況を乗り越えることができるものだろうか。
本書はいわゆる「ヤングケアラー」であったチョ・ギヒョンと、訪問診療専門病院院長ホン・ジョンウォンの対話形式で進められる。両者とも介護現場で業務に向き合う当事者で、理念と人との関係を大事にしながら介護に臨んでいる二人である。
介護は形式的なサービスではなく、表面的な制度の改善で済むような単純な問題ではないと主張する。介助は「私たちが日常で結ぶ関係の名前にならなければならない」と言う。
著者両名は私たちの中に深く刻印された「自助自立」の論理に抵抗し、普段から相互扶助関係を結び互いに支え合おうと、読者たちに訴えかけている。
●目次
プロローグ 介護は循環する
1章 介護の関係を想像する ― なぜ(Why)
2章 介護の時間 ― いつ(When)
3章 介護の仲間たちと関係を結ぶ ― 誰(Who)と
4章 施設と家の二分法を超えて ― どこで(Where)
5章 お世話になるには ― どうやって(How)
エピローグ ― 脆弱性が排除の理由にならない未来を想像して
編集者のレビュー ― 「極端な非効率性」のために
介護関連用語を共に読む
●日本でのアピールポイント
本書は韓国での介護現場の現実を題材に二人の対話形式で進められる。でもこれは韓国だけの問題ではない。日本でも高齢化社会の進行は著しく、病院や家庭、老人ホームでの介護に大きな問題があることが言われて久しい。今は若くてもやがて誰もが年を取ったり、病になったりする。介護の対象になったり、誰かを介護しなければならない時が訪れることを覚悟しなければならない。
介護の現場も家庭や病院、施設など多岐にわたる。でもこれは単に義務的にに助けることではいけない。人と人との触れあい、交流が大事なのである。特に介護される側は、老いや病によって、心を病んでいたり、弱気になっていることも多い。介護する側も、やがて自分も経験するかもしれないこととして、相手に寄り添い、共感することが必要であろう。そんなことを実体験をもとに語り、考えさせてくれるのが本書である。自分のため、家族のため、その他の大事な人のためにも、避けられない現実や未来、対応の仕方を教えてくれる一冊と思われる。
(作成:横田 明)