●本書の概略
本書は韓国最大の電子書店YES24のイベントにて読者のエピソードを募集し、作家であり俳優であるジョージ(ヨ・ドンユン)がそのエピソードに対して著者本人の悩みや経験を語るという独特な形式で作られたエッセイ。1部では著者が自らの失敗や挫折を通して多くのことを学んだ経験談が、2部では多様な愛の話が語られている。
1部「危険な夜明け」
「いつも様々な考えに支配され何1つやり遂げることができない」という読者のエピソードにジョージは「危険な夜明け」の話をする。なかなか眠れない夜は色んな考えがレゴブロックのように積まれていく。考えがまとまれば深く眠ることができる。しかし危険な夜明けは1つの考えをまとめるのに相当な時間がかかってしまう。考えをまとめるためにジョージは文章を書く。複雑な心を、文章を書いて落ち着かせるのだ。考えは常に空っぽにしてあげなければならない。溜まっている水は悪臭を放ち腐っていく。考えもそれと同じで取り出して見えるようにすることが重要なのだ。
2部「経験しなければわからない 愛は」
最近別れたばかりで「一体どれだけ苦しまなければならないのか、立ち直れる日は来るのだろうか」と悩む読者にジョージは、友達ジュンウォンの別れ話と自身の別れ話を語る。ジュンウォンとジョージは同じような別れかたを経験した。体を無理やりえぐられるような失恋の痛みにうめく日々が長く続き、死ぬかと思うくらい苦しかったが死ぬほどではないので辛かった。人は似たような痛みを経験しなければ共感することができない。同じような状況になるまでは分からないのだ。愛の形は人それぞれ違うので一般化することはできない。恋愛経験はあるけれど、愛したことがないといっていた君のことを思い出す。ジョージはこれ以上関わらないことにした。
●目次
作家の言葉
1部 コインカラオケでラップと声楽を歌うことが好きです
危険な夜明け
イーブイはとにかく進化しなければならない
僕を理解してください
それでも映画を撮りたい
パックマン
陸に上がったウミガメ
とりあえずやってみたらどうにでもなるさ
1歩1歩
1歩2歩
僕らが作ったのはゴッホの手紙やシャガールの絵と同じだ
映画「ブルーボックス」を撮りながら考えたこと
最善の選択
子供のように生きたくて公園に行きました
樹齢100年の木と相撲を取る木こり
4本足の子犬テディ
表現をしないのとできないのは違います
共感
2部 洞窟の外に
恋人未満が恋愛になるまで
嘘つき少年が好きだった少女
慣れない考え
愛に正解がありますか
別れる日に嗅いだあの花の匂いは
元恋人の挨拶メール
経験しなければわからない 愛は
愛を忘れたあなたへ
●日本でのアピールポイント
はっきりとした解決策を求める読者には向いていない。読者のエピソードに対する解決策は書かれていないからである。しかし著者の経験談や過去の話を通じて「あ、著者も同じような経験をしたんだ」「そんな風に考えたのか」など不思議な安堵感を覚えることができる。また、著者の意見を強制していないので読みながら抵抗を感じることはなかった。
様々なエピソードがあるので自分自身と照らし合わせてみるのもよい。読みながらハッとしたりホッとしたりして、パンクしてしまいそうだった心が楽になったり、突如として解決策が思い浮かんだりすることがあるだろう。ありきたりな助言ではなく、友達の話に共感するような感覚を求める読者におすすめしたい。
(作成:清水綾子)