●本書の概略
日本統治時代に生きた八人の女性知識人たち。まだ女性の社会進出が今のように容易ではなかった時代、しかも日本の統治下という状況で自分の場所を得るためにもがき続けた彼女たちの経歴は、出版関係者、俳優と小説家、詩人、総長と特使、演説家、医師、官僚と実に華々しい。現代においても簡単には手の届かなさそうなその位置を彼女たちはどう手に入れたのか。その多くは女性として家庭に入るという選択肢を捨て、社会進出を果たすために人生の全てを掛けている。自由に思想を語れない中、親日というレッテルを貼られながらも自分の大志を成就させるために手段を選ばない姿、もしくは親日を拒み、日本から祖国を開放するために海外を駆け回るその行動力、エネルギーには目を見張るばかりだ。そして女性が社会進出するうえで宗教がとても大事な役割を持っていたことも興味深い。そんな彼女たちが自叙伝の中で描いた自身はどんな姿だったのか。自叙伝という形を通じて彼女たちが伝えたかったもの、伝えたくなかったものを読み解いていく。
●目次
1.出版関係者と僧侶:キム・イルヨブの告白
2.俳優と小説家:チェ・ジョンヒの決心
3.詩人とロビイスト:モ・ユンスクの弁明
4.総長と特使:キム・ファランの悔恨
5.長官と党首:イム・ヨンシンの自画自賛
6.演説家と農村啓蒙運動家:パク・インドクの再起
7.狙撃手と医師:イ・ファリムの証言
8.革命家と官僚:ホ・ジョンスクの沈黙
●日本でのアピールポイント
日本統治時代に生きた女性たちの姿を自叙伝という形で追っていくこの本は当時の様子を知るうえで非常に貴重なものだ。歴史の中では男性ばかりが注目されがちだが、その中で奮闘した女性たちの強い意志、固い決意、そして並外れたその行動力は今の時代ではなかなか見ることが難しいものだ。日本統治から祖国を開放し、その発展に全てを掛けた生き様は読む者を圧倒する。
(作成:繭羽)