●本書の概略
本書は、50歳でシリコンバレーへの挑戦を決めた著者による、30歳から約20年間の自己変革の記録だ。学生のころから内向的で自分に自信がなかった著者は、夫のアメリカ留学への同行を機に、好きになれる自分に生まれ変わることを目指す「ボーン・アゲイン・プロジェクト(Born Again Project)」を始める。引っ込み思案で英語もできない状態から、少しずつ積極性や社交性を身に着けていき、今まで全くしていなかった運動にも毎日取り組むようになる。プロジェクトを通じて小さな成功体験を徐々に積み重ねていった経験から、常に新たな学びを得ようと様々な試みをするようになり、水恐怖症の克服、剣道への挑戦などもしながらキャリアにも磨きをかけ、ついにはグーグル本社のポストを射止める。ワーキングマザーとしての苦悩、大事な会議での英語プレゼンテーションの失敗や、なかなか上達しない剣道の腕前の話なども赤裸々に語りながら、大きな目標の達成のためには細く長く続ける底力が大切だとして、天才性やセンスよりもこつこつ続ける力を身に着けるために心と体の筋力を鍛える重要性やその鍛え方を説く。
●目次
はじめに | なかなか成長しない自分に焦っているあなたへ
INTRO | 50歳の私がシリコンバレーだなんて
PART 1 体力も情熱も「増やす」ものです
PART 2 学んだだけ広がる明日の私の仕事
PART 3 再び起き上がる力、心のコアを鍛える
PART 4 女性、母、リーダー―共に歩む道をつなぐ
おわりに | 焦って不安になったときに振り返るべきこと
謝辞
●日本でのアピールポイント
日本も韓国も、欧米諸国に比べれば自己肯定感が低い傾向にある文化圏だ。年齢問わず、今の自分を好きだと言い切れる人はごく一握りなのではないだろうか。そんな中、ここ数年は在宅勤務や外出自粛などを受けて自宅で過ごす時間が増えたことで、自分の人生やキャリアを見つめなおしたり、勉強、運動、趣味といった新しいことを始めたりした人も少なくないが、三日坊主になってしまっている人も多い。20年もの間継続して努力を続けられている著者が紹介するノウハウは、なかなか物事が続けられない自分に後ろめたさを感じているなら、きっと興味深いもののはずだ。また、著者の自己変革プロジェクトは30歳から、シリコンバレーでの勤務は50歳からのスタートだ。継続に重きを置いているので、なるべく早いうちに取り組みを始めるメリットを認めながらも、挑戦をいつ始めても遅くはないことを著者は自ら体現している。時間がかかったとしても、スタートが遅かったとしても、より自分を好きになれるように少しずつ変わっていきたいと思わせてくれる一冊だ。
(作成:須見春奈)