●本書の概略
この世を去った飼い猫に語りかけるかたちで、その猫との日々を通して考えるようになった動物たちのことを描いた絵本。人間によって自由を奪われたまま命を終えた動物たちの話を見開きのページにひとつずつ挙げていき、申し訳なく思う気持ちを込めて、「さよなら、きみたちのことを忘れない」と語りかけている。檻から出た瞬間に銃殺されたピューマ、山火事で焼け死んだコアラ、暑い気候に苦しみながら動物園で生きたホッキョクグマ、閉じ込められた鳥、水槽に閉じ込められたイルカなどが悲しみを帯びた幻想的なタッチで描かれている。
著者は、本書の前にもアニマルライツをテーマとした絵本を2作発表している。本作については、飼い猫がきっかけで人間の世界で虚しく死んでいった動物たちに関心を持つようになり、すべての動物たちが人間に苦しめられることなく自由に生きてほしいという願いを込めて作品を作ったと語っている。
韓国の絵本にしては珍しくカバーがついているが、このカバーは裏返して開くと絵本の一場面がプリントされたポスターになるように作られている。
●日本でのアピールポイント
日本でも年々「アニマルライツ(動物が動物らしく生きる権利)」への関心が高まっていて、動物たちが本来持っている自然環境、家族、自由など奪う動物園や水族館にも疑問の声が出るようになっているので、著者の感じていることに共感できる人々は多いだろう。絵は現実と空想の間のような幻想的な雰囲気で、あまり直接的な表現(残酷な表現など)はされていないので、そういったテーマに関心のある大人の読者はもちろん、こどもと動物の命の扱われ方について話し合うきっかけとしても勧めることのできる絵本ではないかと思う。
(作成:渡辺奈緒子)