●本書の概略
⽇本でも⼈気の韓国のかき氷=パッピンスが、どうやって⽣まれたかをユーモアと奇抜な想像⼒で描いた愉快な絵本。「あずきがゆばあさんと⻁」、「お⽇さまとお⽉さま」のような韓国昔話からモチーフを得ているが、奇想天外なストーリは全く新しい。⼀度⾒れば忘れられない可愛いキャラクターやコミックのコマ割り⼿法を取り⼊れた表現も魅⼒的だ。
●あらすじ
おばあさんの昔話が始まります。
むかし、⼭奥に住むおばあさんが、⼤切に育てた果物(イチゴ、⽢ウリ、スイカ)と作り⽴ての温かい⼩⾖粥を持って、市場へ売りに⾏きます。途中で急に雪が降り始めると、暖かい⽇に雪が降ると現れるという雪のように白いトラが⽬の前に。「美味しいもんくれなきゃ、お前を⾷うぞ!」と⾔うトラにおばあさんはイチゴをやって逃げますが、体踊りだすような美味しさにまた追ってきます。次々⽢ウリもスイカも渡して必死に逃げるおばあさん。分⾝の術まで使いながら追ってきて「美味しいもんくれなきゃ、お前を⾷うぞ!」と⾔うトラ。おばあさんは最後に残った⼩⾖粥だけはやるまいと踏ん張るが、取り合いになり、⼿から滑った⼩⾖粥の壺がトラの頭の上に落ちます。その瞬間、⼩⾖粥をかぶったトラはシャリリと溶けてゆき、その場に残ったのは砕かれた果物と雪のゴチャマゼだけ。おばあさんはそれをきれいに拾い、市場へ売りに⾏きます。
その⽇から雪のゴチャマゼが美味しいと津々浦々に評判が広がり、現在私たちが⾷べるパッピンスになったと、これがパッピンスの伝説かもしれないと、おばあさんは昔話を終えます。最後のページで、「美味しいもんくれたら、また聞かせてやるぞ!」と⼀⾔加えながら。
●⽇本でのアピールポイント
なんと⾔っても、愛らしいキャラクターが⽬を引く。
勇敢で機知に富んだおばあさんと、体は⼤きいが何処か間抜けな雪トラ。雪トラはばあさんを怖がらせようとするが、その姿はむしろ⼀緒に遊ぼうとねだる⼦どものようにも⾒える。かき氷は夏のイメージが強いが、冬の定番の雪が加わり、季節にとらわれなく楽しめる。
それに物語の原点とも⾔える昔話の形式を⽤いながら、描き⽂字のような漫画要素を取り⼊れたり、誰もが繰り返し読みたくなるエンターテイメント絵本になっている。絵は、⼯藤ノリコのノラネコぐんだんシリーズ絵本を思わせるタッチで、コマ割りもあれば、映画のワンシーンのような⾒開き場⾯もあり、ダイナミックな展開に引き込まれる。
本書の出版後、前⽇譚とも⾔える『친구의전설』(友たちの伝説、2021年)が出版され、2冊セットでもよく売られている。また、⼤規模の展覧会も多数開かれ、イベントやグッズ販売も話題に。読み聞かせ⽤の⼤型絵本も出版されるなどの⼈気ぶり。
(作成;チャンヨンス)