ときには独りという楽しみ #僕の自発的非対面ステイホーム・ライフ(때로는 혼자라는 즐거움 #나의 자발적인 비대면 집콕 생활)

原題
때로는 혼자라는 즐거움 #나의 자발적인 비대면 집콕 생활
著者
チョン・ジェヒョク
出版日
2020年12月7日
発行元
パラムブック
ISBN
9791190052511
ページ数
230
定価
13,000ウォン
分野
エッセイ

●本書の概略

2020年、桜が咲き、心が浮き立つような春の代わりに新型コロナウイルスがやってきた。不要不急の外出は自粛するよう呼びかけられ、人々は互いに距離を取って気軽に会うことができなくなり、家の中に引きこもった。
本書は、病気のため6年前に会社勤めを辞め、ソウルを離れて実家のある仁川で世間より一足先にステイホーム生活を送っていた著者が、独りで過ごす日常を見つめたエッセイ集である。テーマごとに4つの章に分かれており、プロローグと雑誌に掲載されたコラム5編を含め、37編のエッセイを収録している。

著者は、独りの時間を“もっとも自分らしい自分を見つめる時間”と語る。Netflixを何時間も観続けたり、部屋着に頭を悩ませたり、一度も顔を合わせたことのないSNS上の“友人”の日常を覗き見たり。家の中で独り過ごす時間はかならずしも生産的でないかもしれないけれど、コーヒーをゆっくり淹れ、学校のチャイムと子どもたちの遊び声が美しく重なるのを聴くとき、見逃していた日常の風景に気がつく。
コロナ禍で、私たちは世界中でほとんど同時に、当たり前の日常が当たり前でなくなる経験をした。作家の村上春樹が用いた造語「小確幸」(小さいけれど確かな幸せ)は、韓国で2018年頃に流行した言葉だが、ステイホーム生活の中にささやかな日常の幸せを見つけようとする本書も、その文脈上にあるように感じる。

●目次

プロローグ_しばしの足止め、その後に見えるもの

トンネ
友人
コロナ時代の朝

●日本でのアピールポイント

日本在住経験があり、ファッション誌、映画誌の発行にも携わってきた著者は、日本のカルチャーに造詣が深く、本書の中でも、映画『百円の恋』やドラマ『レンタルなんもしない人』、菅田将暉のオールナイトニッポンに草彅剛のYouTubeなど、随所で日本のポップ・カルチャーを引き合いに出している。紹介者は、本書でいくつかの日本のバンドの名前を初めて知った。
2020年3月以降、日本国籍者の韓国渡航のビザ免除措置が停止され、日本からもっとも気軽に行くことができる国の一つだった韓国との物理的な距離は遠ざかった。しかし、インターネットとSNSがある現代は、リアルタイムで情報を共有し、ほとんど同時に同じドラマを観て、感情を共有することができる。隣の住人の日常よりも、SNS越しの“友人”の日常の方がよく知っていることもある。
本書で語られる仁川での著者の生活は、たびたび登場する日本の固有名詞のせいか、東京郊外の生活のように近しく感じられる。

(作成:小滝文)

チョン・ジェヒョク
成均館大学卒業後、映画専門誌『シネ21』、旅行誌『AB-ROAD』、ファッション誌『VOGUE Korea』等の記者として十年余り勤務した後、日本へ渡り東京特派員として活動。釜山国際映画祭での通訳業務や交通放送DMBチャンネルで韓国文化を紹介する日本語番組のレギュラーパネリスト等の経歴がある。現在は社会やカルチャー 全般に関する文筆活動を行っており、日本語でもHYOKKI名義でメディアプラットフォームnoteに文章を発表している。 https://note.com/monoresque/ 著書に『東京の時間記録者たち』がある。また、臼井由妃著『一週間は金曜日から始めなさい』の韓国語翻訳を手がけた