●本書の概略
2018年、韓国の全国独立書店が選ぶ「今年の本」にもなった『日刊イ・スラ 随筆集』の著者が講師をつとめる文章教室でのエピソードを綴ったエッセイ集。
小学生から大人の女性まで様々な年齢の生徒たちが、文章を通して真摯に自分自身と向き合う姿から著者自身もさまざまなことを受け取り、それらに対し誠実に答えていく姿が綴られていく。小学生の兄弟や麗水(ヨス)文章教室の生徒などの文章が多く引用されている点も特徴的だ。子どもたちのエピソードを中心に約30編を収録。
●目次
プロローグ 真面目に書く体力、真摯に愛する体力
文章教室のはじまり
兄弟文章教室
麗水(ヨス)文章教室
10代学生たちとの文章教室
私の幼少時代とオディン文章教室
大人女性の文章教室
コロナ時代の文章教室
エピローグ 私の長年の師匠より
●日本でのアピールポイント
子どもたちが文章を書き続けていく中で、主語が「私」から他の人へうつる姿、そして子どもたちの書く文章と真摯に向き合い、愛を持ってどの点が良かったのかを伝えていく著者の姿から、自分自身を含む「人」を大切にすることの尊さが伝わってくる。
文体は軽やかで、すっと心に入ってくるようなものばかり。この点から著者と同年代である20〜30代女性に受け入れられやすいのではないかと考える。キャッチーな言葉やアドバイスが書かれているわけではないが、子どもたちのありのままの姿を通して感じたことを綴っていく著者の文章は、私たちが日常の中で感じる小さな悩みに寄り添ってくれているように感じられる。
コロナ禍で人対人の交流が希薄になっている時期だからこそ「人との向き合い方」、そして自粛により一人時間が増えた今、自分自身の「日常」について改めて考えるキッカケになる一冊にもなるのではないかと思う。
(作成:豊田 祥子)