コーヒーの世界史+韓国珈琲史(커피세계사+한국가배사)

原題
커피세계사+한국가배사
著者
イ・ギルサン
出版日
2021年8月19日
発行元
図書出版プルンヨクサ
ISBN
9791156122012
ページ数
423ページ
定価
20,000ウォン
分野
人文

●本書の概略

本書は著者の素朴な疑問から始まった。なぜコーヒーの歴史には生産者ではなく、消費する白人の話しかないのか。なぜ、我々の視点から書かれたコーヒー歴史本はないのか。なぜ韓国人はこんなにもコーヒー好きになったのか、など。
つまり、本書はその疑問に著者自ら答えを見つけていく長い旅の結果物だと言える。

1部・2部では膨大な資料をベースに、生産国と主に欧米消費国内の歴史的出来事や状況を整理し、3部・4部では韓国でのコーヒーの登場から現在に至るまでの歴史と文化を丁寧にまとめる。

特にコーヒーの起源、製法だけに留まらず、コーヒー文化そのものに関する内容が多く、知識と面白さ両方を一度に手にいれることのできるずっしり詰まった内容になっている。

●目次

プロローグ コーヒーと出会う
1部
01 コーヒー誕生物語ができるまで 02 イスラムコーヒー文化の誕生:中国茶の影響 03 ヨーロッパから伝わったコーヒーの話と香り 04 帝国主義とジャワコーヒーの誕生 05 インド洋、大西洋を渡ってブラジルへ 06 奴隷が作ったコーヒー、コーヒーがもたらした革命 07 お茶を選んだ英国、コーヒーを選んだ大陸
2部
08 コーヒーの大衆化とナポレオン 09 コーヒー消費のリーダー米国、巨大生産国ブラジル10 戦争、コーヒーそしてコーヒー戦争
3部
11 1861年4月7日漢陽へ届いたコーヒー 12 朝鮮最新商品コーヒーの流行 13 喫茶店風景 14 カフェ全盛期 15 モダンボーイ、モダンガールそしてつばめ喫茶の思い出 16 ネルドリップする良妻賢母 17 代用コーヒーを飲みながら軍歌を聞く喫茶
4部
18 インスタントコーヒーはコーヒーのファーストウェーブ 19 国産コーヒーの誕生とDJの時代 20 コーヒー専門店の登場とコーヒーのセカンドウェーブ 21 コーヒーを挽いて黄金を生む 22 消えたルール、コーヒーのサードウェーブ 23 韓国型サードウェーブ、コーヒー・ライフ・バランス
エピローグ
参考文献

●日本でのアピールポイント

コーヒーが日常の一部となった今、その味や原産地、淹れ方に関するこだわりや知識を持つ人は多い。しかしその歴史については案外よく知らない。
本書はそんな我々に単にコーヒーの歴史以上の楽しみを提供する。まず、教育学者ならではの優しくて丁寧な説明のお陰で、むやみに覚えた歴史的出来事が「コーヒー」を軸にして線としてつながっていくような不思議な体験ができる。そして、カルディーのように誰もが一度は聞いたことのあるコーヒーにまつわる伝説に触れつつも、より興味深い数々の物語をちりばめているため、全く退屈しない。

本書全体の半分以上は韓国珈琲史だが、日本とのつながりが出てくる所もまた面白い。それは植民地という歴史的理由で日本での留学生や日本人による、日本人のための喫茶店がその時代の韓国内に大いに影響を与えたからだ。
400ページ以上にもなる本書は一見難しそうに見える。ただ、読み始めると手が止まらないほどの発見と楽しみがあり、K-pop, K-drama, K-foodに続く韓国独自のコーヒー文化を日本のそれと比較しながらぜひ読んでもらいたい一冊だ。
最後に一言。 Life Happens, Coffee Helps.

(作成:孫 鎬廷)

イ・ギルサン
延世大学、韓国学中央研究院を経て、アメリカイリノイ大学で教育学博士取得。韓国学中央研究院の韓国学大学院で教授として働きながら、『20世紀韓国教育史』(07年)、『世界の教科書 韓国を語る』(09年)、『韓国教育第4の道を行く』(19年)を、訳書として『世界の歴史教育論争』(15年)を出版した。10年前にバリスター資格取得ののため、コーヒーの歴史について勉強しながら、その魅力にはまる。最近は韓国コーヒー協会学術誌『韓国コーヒー文化研究』の編集委員をつとめながら、この学術誌内に「我が国コーヒー歴史起源の考察」という論文を発表した。 教育学者からコーヒー人文学者へと変身中だ。