大韓民国チキン事情 ~韓国人の胃袋を支配するフライドチキンのすべて~(대한민국 치킨전)

原題
 대한민국 치킨전 ~백숙에서 치킨으로, 한국을 지배한 닭 이야기~
著者
 チョン・ウンジョン
出版年月日
 2014.07.20
出版元
 タビ出版社
ISBN
 9788998439118
価格
 14,000ウォン
分野
 人文

●本書の概略

本書は、韓国における「フライドチキン」を徹底的に分析した1冊である。「フライドチキン」は韓国において、1997年アジア通貨危機以降、よく外食するメニュー1位の座を不動のものにしており、事業登録されている店舗だけで全国36,000店(2014年現在)にも上る、まさにソウルフードだ。

本書では、「フライドチキン」が韓国人のソウルフードとしてこれほどまでに根付くことになった要因分析をはじめ、韓国における「フライドチキン」の歴史、「フライドチキン」という外食産業についても分析している。特に産業構造の分析においては、チキン店で働く人、チキン店経営者、フランチャイズ企業、畜産業、畜産農家、そしてビール会社に至るまで、フライドチキンにまつわる多様な側面から考察している。

●目  次

出版にあたり
はじめに
第1部 フライドチキンが韓国人のソウルフードになれた理由
101 丸焼き鶏の懐かしい記憶
102 ハレの食べ物からケの食べ物へ
103 フライドチキンからネギ唐揚げまで、あなたのお好み探します
第2部 韓国でチキン屋の社長として生きるということ
204 誰でもできる!?チキン屋経営
205 ルールが金を生むフランチャイズの世界
206 韓国でチキン屋の社長になるということ
第3部 大衆は何を見てチキンを選ぶのか
307 ブランド?広告タレント!
308 スポーツ、ビール、チキン
309 鳥インフルが怖いって?
310 チメク時代の到来
第4部 大韓民国チキン略史Ⅰ ~ペクスクからビールのお供へ、韓国人の胃袋を掴んだ鶏~
411 ペクスクからヤンニョムチキンまで
412 ヤンニョムチキンの威勢
413 チキンなくしては生きていけない韓国ビール業界
第5部 大韓民国チキン略史Ⅱ ~産業によって作られたチキン、チキンが支える産業~
514 チキンの条件
515 豆・食用油・飼料のトライアングル
516 養鶏うらめしや

●日本でのアピールポイント

韓国において「チキン」とは「フライドチキン」を示す言葉だが、それは「徹底的に韓国化され、老若男女に受け入れられているフライドチキン」を指し示している。街中にチキンとビールを楽しめる店舗があちらこちらにあるだけでなく、デリバリーサービスを利用すれば自宅でも気軽に楽しめることもあり、韓国人の誰もが自分好みのチキンブランドやメニューを認識している。近年、日本で話題となっている韓国ドラマの劇中においても、人々がチキンを楽しむ様子が頻繁にみられるが、こうした描写を見た人たちは、チキンがこれほどまでに韓国人に愛されているソウルフードであることに驚き、そしてチキンを実際に食べてみたいと思った人も多いことであろう。
本書については、筆者であるチョン・ウンジョン氏にとって初めての出版物であり、さらには「食」をテーマとした書籍を扱う<タビ出版社>から出版されている点にも注目したい。タビ出版社は、「食」を「生きること」と同等のものとして捉え、食をテーマとしながらも食文化だけでなく、農業や食品産業などにも視野を広げており、結果として韓国社会そのものについて考えさせられる内容の書籍を多く出版している。
たかが「フライドチキン」だが、それを通じて韓国人、韓国文化、韓国社会の一端を知ることのできる一冊となっている。

(作成:三橋洋美)

チョン・ウンジョン
農村社会学者。1977年、ソウルから約100キロ離れた忠州で生まれる。6歳でソウルに引っ越すが、両親がソウル市近郊の南揚州市にて農業を営んでいたこともあり、学生時代から社会学を学びながらも、農村における社会学に興味関心を持ち研究してきた。著書には、食、畜産業・農業、農村などを扱ったものが多い。