ガールズグループ経済学(걸그룹 경제학)

原題
걸그룹 경제학
著者
ユ・ソンウン、キム・ジュヨン
出版日
2017年12月18日
発行元
21世紀ブックス
ISBN
9788950973056
ページ数
360ページ
定価
18,000ウォン
分野
人文

●本書の概略

長年の少女時代ファンである新聞記者と、TWICEファンのデータエンジニアがタッグを組んだ本書は、韓国の女性アイドルグループの盛衰興亡に関わる様々な疑問を、経済学や経営学などの理論を用いて紐解く。

2000年代後半にデビューした少女時代やWonder Girlsから、TWICEなどまさに現在の音楽チャートを賑わせているグループまでを対象に、各章で異なる疑問が提起され、著者がブログやSNSの分析データ、業界関係者へのインタビューも交えながら各々のスキルを活かして答えとなる理論を展開していく。

31章からなる本書ではアイドル業界を論理的に分析するだけではなく、同じ理論を適用できる政治問題や社会現象も取り上げている。一見熱のこもったガールズグループ史分析のようだが、アイドルの活動も大局的な見地では韓国や世界経済の動きの一部であることを伝える一冊だ。

●目次

凡例

はじめに すべては1枚の地図から始まった

01 なぜ事務所はみな清潭洞にあるのか――先行者利益とビッグ3の法則

02 女性アイドル業界も上位20%が支配する――パレートの法則

03 なぜヘルメットをかぶって登場したのか――CRAYON POPのポジショニング

04 第3世代のガールズグループはなぜ9人組以上なのか――リンゲルマン効果

05 101人の少女の戦い――ナマズ効果

06 テヨンがサビを歌う理由――比較優位の原則

07 女性アイドルグループが視聴率3%の歌番組を捨てられない理由――バフェット効果

08 ガールズグループとK-POPに翼を授けるパラドックス――コモンズの悲劇

09 「Pick me」みたいな歌詞にしようか――ジップの法則

10 EXIDが大ブレイクした日――ティッピングポイント

11 STELLARが軍隊向け公演によく出るワケ――代替財と補完財

12 グッネチキンのCMになぜ少女時代が出演したのか――バンドワゴン効果

13 女性アイドルグループのカムバック時期とナッシュ均衡

14 ティファニーがすばやく謝罪した理由――割れ窓理論

15 IUがドラマに限って注目を浴びられないワケ――コア・コンピタンス

16 ソリョンだけ売れてもAOAが笑顔な理由――トリクルダウン理論

17 デビュー8年目のRainbowの生存と埋没費用

18 ツウィが引き起こしたバタフライエフェクト

19 少女時代はなぜメンバー補充をしないのか――メニューコスト

20 2NE1とmiss Aが見せた「少年力士」のジンクス――フィールズ賞効果

21 ガールズグループもレームダック化する

22 私がTWICEに乗り換えた理由――限界効用逓減の法則

23 アイドル7年目のジンクス――ビッグマック指数とポートフォリオ

24 なぜ「Produce 101」に熱狂するのか――IKEA効果

25 クラウドソーシングと「Produce 101」は最高の組み合わせだったのか

26 男女混合グループの氷河期は外部性のせいか

27 チャオルーがアイドルではなかったら――機会費用

28 おじさんファンの限界とガールズグループに足りないもの――アイデンティティ経済学

29 いつ頃デビューできるのか――一万時間の法則

30 女性アイドルグループはなぜダンス曲を歌うのか――ホテリングモデル

31 AKB48は、なぜ少女時代を越えられなかったのか――ガラパゴス症候群

付録 大韓民国主要ガールズグループ平均データ、2009-2016年ガールズグループ勢力図

●日本でのアピールポイント

K-POPをはじめとする韓国発のエンターテイメントに対する関心と熱気は世界各地でかつてないほどの高まりを見せている。日本には最近になって韓国のアイドルに関心を持ち始めた層がいる一方で、著者2人のような長年のファンも多い。前者にはガールズグループが一気に増え始めた2000年代後半から現在までの韓国アイドル業界の変遷を辿る入門書として、後者には何気なくニュースやSNSで追っていたアイドルたちの動向や、言われてみれば不思議に思えるアイドルグループのコンセプトや戦略に、論理的な根拠を示してくれる専門書として、どちらの層にも新しい発見をもたらしてくれる。

もちろん日本には韓国アイドルに無関心な人も多数いるわけだが、一見縁がなさそうなアイドル活動と経済学の組み合わせは、他の消費者向けビジネスやマーケティング分析のヒントにもなる。著者は冗談交じりにビジネス立ち上げの参考としても本書を薦めているが、K-POPファンのみならず、韓国事情に詳しくないビジネスパーソンにも興味深い内容だろう。

作成:須見春奈

ユ・ソンウン
中央日報政治部記者。高麗大学で韓国史と気候環境学を学ぶ。幼い頃からインディー・ジョーンズになることを夢見ていたが、やっと目を覚まして報道機関に入社し、10年以上勤めている。
キム・ジュヨン
Daumソフト(現・Vaiv)データエンジニア。西江大学で社会学と宗教学を専攻。Daumソフトに入社後、ソーシャルビッグデータの分析に携わる。現在は、テキストデータエンジニアリングの業務を担う。