ぞうのお父さんと100つぶのしずく

原題
코끼리 아저씨와 100개의 물방울
(CHEKCCORI BOOK HOUSEで発売中です。)
出版日
2012年7月5日                             
発行元
ムナクトンネ(문학동네)          
ISBN-13
9788954618618 
頁数
56 
判型
257×215mm

2013年ブラティスラヴァ世界絵本原画展「金のリンゴ賞」を受賞した韓国の絵本を紹介します。ピクセルアートという斬新な手法で描かれた、親子で楽しめる最先端の絵本です。

●概略 

 ぞうのお父さんが、子どもに水を届けるまでの大変な道のりが、ピクセルアートという斬新な手法で描かれる。1ミリ四方のピクセルで小さい木を一本書くためには、ピクセル100個を使わなければならず、このようなピクセルの集まりが、子どもたちに水を与えたいという、ぞうのお父さんの切実な願いを表現している。

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●あらすじ

 日照りの中、遠くまで水を汲みに来たぞうのおじさん(お父さん)は、喉を乾かせて待つ子どもたちの所まで急いで帰ります。100粒の水滴をバケツに汲んで自転車に……。ところがギラギラと輝く太陽は、 水滴を容赦なく奪います。お化けも出るし、崖から落ちたり、蟻塚の火 災を消し止めてあげたり、しまいには鳥たちに奪われ、結局、大切な水滴はなくなってしまいます。とうとう、ぞうは泣き出してしまいます。しかしそこに奇跡の雨が降り、ぞうは、どうにか子どもたちに水を飲ませることができるのでした。さまざまな困難にさいなまれながらも、なんとか父親としての役割を果たそうとするぞうのお父さんのハッピーエンドストーリー。

●試訳

  ぞうのお父さんは、とおくまで水をくみにやってきました。ひでりがつづき、ちかくのオアシスが、ひあがってしまったからです。 お父さんは、バケツいっぱいに水をくみました。100つぶのしずくです。さあ、いそいで家にかえらなくてはなりません。 こどもたちが、まっているのですから。

●日本でのアピールポイント

 さまざまな困難に直面しながらもめげずに努力する父親の一日を描いている。たいへんな道のりを経て、無事に子どもたちに水を飲ませ ることができたとよろこぶぞうのお父さんに、読者たちは、自分の父親の姿を投影してみることができる。子どもたちは、ふだん見ることのできなかった父親の一日を垣間見ることで、家族に対する父の気持ちや愛情を理解することができるだろう。絵は、「1ミリ四方 のピクセルの連続」のデジタル技法が斬新で、洗練された空間配置や色使いとともに、新しい感覚の絵本となっている。これまでの韓国の絵本から受ける印象から大きく脱却しており、グローバルな人材によって、新天地が切り拓かれた最先端の韓国絵本といえる。このところ、海外で学んだ韓国人作家の活躍が続いており、絵本の可能性を広げるその感性に注目させられる。

著者(文・絵):ノ・インギョン(노인경)
1980年ソウル生まれ。弘益大学校でビジュアルデザインを専攻したあと、イタリアに渡り美術を勉強した。
2000年国際 デジタルアートフェスティバル 優秀 賞、2002年ソウル童話イラスト賞受賞。 本作で、 2013年ブラティスラヴァ世 界絵本原画展「 金のリンゴ賞 」を受賞。