『完全に平等で、非常に差別的な 拡張のダンス史』(キム・ウォニョン著/牧野美加訳/みすず書房)

「この本を書いてみて、わたしの身体には思ったより広い世界が宿っていることがわかった。(中略)わたしを平等からもっとも遠ざけていると思っていたこの身体に、もっと早く注文していればよかったのにと思う。遅まきながら、この平等で、広く、深い「力」の起源にたどり着けたのは幸いだ。」(まえがきより)

まえがきにも何度も登場する「力」の文字にハッとしてしまいました。「ダンス史」を通し、自身の身体とまっすぐに向き合い、さまざまな「視線」についても解き明かしていく「力」強い一冊は、きっと百人百様の読みができるに違いないでしょう。

翻訳を担当された牧野美加さんからメッセージを頂戴しました。

車椅子ユーザーである著者キム・ウォニョンさんはこれまで『希望ではなく欲望』『だれも私たちに「失格の烙印」を押すことはできない』『サイボーグになる』(キム・チョヨプとの共著)などの著書で、人間の尊厳や、障害とテクノロジーの目指すべき未来について思索を重ねてきました。本書は6年ぶりとなる単著です。弁護士からパフォーマーへと活動の軸足を移した著者が実際に舞台に上がるなかで感じ、考えたことを中心に、世界のダンスの歴史や公演アクセシビリティー、舞台とダンスの平等といった多彩な切り口で「よいダンスとは何か」を徹底的に追求した労作です。著者の半生の集大成とも言える本書をぜひ手にとってみてください。(牧野美加)

『完全に平等で、非常に差別的な 拡張のダンス史』(キム・ウォニョン著/牧野美加訳/みすず書房)