こんな風に自分の母親との関係を語り、描いている作品に初めて出会ったような気がする。『日刊イ・スラ わたしたちの間の話』以降日本での邦訳本が出るたびに、さまざまな話題を呼んでいる作家でドラマ脚本家でもあるイ・スラの最新邦訳のコミックエッセイ。
母娘の関係の深さに、そして母ボギさんのカッコいい姿に、そしてその母を見てすくすくと自由に育っていくスラさんの姿に、時に驚き、笑い、ちょっとホロリとしながら読める。そして読み終わるとなぜか元気をもらえる一冊です。
翻訳を担当された桑畑優香さんから推薦のメッセージを頂戴しました。
幼いころ、転んで顔をくしゃくしゃにして泣きながら顔を上げると、なぜか母も同じ表情になっていた。歳を重ねた母が、人知れず涙を流す姿を目にしたとき、気がつけば自分も泣いていた。そんな経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本書は、そうした涙腺でつながったイ・スラさん母娘の記憶を綴ったエッセイです。「母である前に、一人の人間としての母を知りたかった」。その思いから生まれたイ・スラさんによるマンガと文章は、やさしく、大いにユーモラスで、時に鋭い。
ページをめくるたびに、かつての自分を重ねてくすっと笑い、あの日の母を思い出してほろりと涙し、母としての自分をふと見つめ直す。そんなひとときを、本書はきっともたらしてくれるはずです。
『わたしは泣くたびにママの顔になる』(イ・スラ著、桑畑優香訳、かんき出版)

