『青い落ち葉』(キム・ユギョン 著/ 松田由紀、芳賀恵 訳/ 北海道新聞社)

“私は「脱北作家」という肩書きが宿命のようについて回る作家です。ある意味、私のアイデンティティーでもありますが、正直なところこの肩書から解放されたいと思っています”という言葉に、思わずハッとさせられました。
私自身「脱北した人の作品」ということが気になり手に取ったからです。

そんな著者ですが祖国に暮らす同胞たちの思いも伝えたい気持ちが勝っていたのでしょう。我々が経験することのない現実の「脱北民」の思いをしっかりと伝えてくれる9篇の短編小説集でした。
また脱北民を受け入れるための韓国社会の施策も知ることができる側面も見逃せません。(ささき)

翻訳を担当されたお一人、松田由紀さんから推薦のコメントを頂戴しました。

「青い落ち葉」は匿名の脱北女性作家による9本の短編小説集です。
 この本では脱北民を、北朝鮮という暴風にさらされて無惨に舞い落ちた青い落ち葉になぞらえ、物語を紡いでいます。
私たち日本人は、北朝鮮の人々に対しては報道により画一化されたイメージを持ってしまいがちですが、様々な抑圧の中でもしっかりとした意志を持って行動し、私たちと同じように日常の折々で様々な感情に心を動かされながら生きているのだということを読者の皆さまにも感じてもらえたら嬉しいです。これまで脱北作家の作品に関しては、ドキュメンタリー形式の告発的な内容が目立ちましたが、作家のキム・ユギョンさんは登場人物の設定や物語の構成も巧みで、とても惹きつけられました。

『青い落ち葉』(キム・ユギョン 著/ 松田由紀、芳賀恵 訳/ 北海道新聞社)