『すいかのプール』(斎藤真理子訳、岩波書店)で、そのやわらかなタッチで描かれた優しい絵とちょっとユーモラスで温かいストーリーが日本の読者の心を掴んだ韓国の絵本作家アンニョン・タルさんの2冊目の邦訳本です。
主人公の「とげとげウサギの子」と大きな大きな「クマせんせい」のお話。初めての幼稚園にどきどきしてちっとも楽しくないというウサギの子。でもクマせんせいに褒めてもらうとたちまちクマせんせいが大好きになって、「けっこんしたい」と叫んじゃう姿は何とも愛らしい。そして何もかも包み込む「クマせんせい」のような存在が、今とても求められている時代に思えてきました。
作品の魅力について、訳者のひこ・田中さんからメッセージをちょうだいしました。
ある日、親に連れられ、知らない子どもと、知らない大人のただ中に置いていかれてしまう。
周りの子どもたちはみんな、あいつは何者だというような顔で見つめているし、大人は優しそうに見えるけど、ほんとうはどうだかわからない。
不安がいっぱいだけど、弱さを見せてしまいたくはない。でも、あんまりよそよそしいのもまずいかもしれない。
初めて幼稚園に入園した子ウサギを描いた本作は、そんな子どもの緊張感を柔らかなユーモアで包みながら、描いています。
この子、ほんとうにおもしろいです。すねてみたり、甘えてみたり、気にしすぎたり、どんなときもいっしょうけんめい。その必死の姿をアンニョン・タルさんは、愛情深く活き活きと描いていらして、何度もくすりと笑ってしまいます。
これから幼稚園に入る方も、現役幼稚園児の方も、そして元幼稚園児の方も、『にんじんようちえん』を楽しんでください。(ひこ・田中)
※ポプラ社のnoteでもアンニョン・タルさんとひこ・田中さんのメッセージを公開中
「子どもが好き」の思いから生まれた『にんじんようちえん』~原作者から日本のみなさんへ──アンニョン・タル