『いいから、あなたの話をしなよ 女として生きていくことの26の物語』(チョ・ナムジュほか/著 大島 史子/訳 李美淑/監修 アジュマ)

『いいから、あなたの話をしなよ 女として生きていくことの26の物語』(チョ・ナムジュほか/著、大島 史子/訳、李美淑/監修、アジュマ)を紹介します。江南駅10番出口殺人事件をきっかけに、フェミニストたちの声が社会を大きく動かした韓国。『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者チョ・ナムジュなど26人が、女性の日常が具体的にどのようにどれだけ変わったのかを語るエッセイ集です。訳者の大島史子さんからメッセージをいただきました。

本書を読んだ実母から「原稿」が郵送されてきました。『いいから、あなたの話をしなよ』というタイトルを文字通り受け取って答えてくれたその原稿は、母が女として生きてきたことの物語でした。(お母さん、たいへん興味深く読ませていただきました。)
不思議な力を持つ本です。26の「あなたの話」を読めば、27番目の「わたしの話」が湧き上がる。その力の源は、奇跡のような多様性にあると思います。多様性が認められているがゆえにどの著者の物語も率直で、恐れがなく、それゆえ魅力的となり、読み手の語れなかった物語を引き出すのです。
著者たちは韓国女性という共通点こそあれ、世代も立場も考えも文章スタイルもさまざまです。わたしから見れば皆さんそれぞれにフェミニストですが、女性運動家や女性学の研究者もいれば、自身をフェミニストと呼んでよいのかためらう人もいる。本書は韓国で2017年に出版されましたが、フェミニスト間の分断が深刻化した現在ではもう「こんなメンバーで一冊の本は出せないでしょう」と、原書版元イフブックスのチョ=パク・ソニョン編集長はおっしゃいました。
フェミニズムには女性の物語が欠かせず、女性たちが違いを恐れず率直に語るためには、ひとつの正しさや「わきまえ」を強要しない聞き手が必要です。本書は物語であると同時に、優れた「聞き手」でもあると信じています。(大島史子)

『いいから、あなたの話をしなよ 女として生きていくことの26の物語』(チョ・ナムジュほか/著 大島 史子/訳 李美淑/監修 アジュマ)