『僕の狂ったフェミ彼女』(ミン・ジヒョン/ 著、加藤慧/訳、イースト・プレス)

韓国でドラマ化・映画化が決定し、日本でも発売されるや話題沸騰中の『僕の狂ったフェミ彼女』(ミン・ジヒョン/ 著、加藤慧/訳、イースト・プレス)。初恋の彼女に再会して心ときめかせたら、彼女はフェミニストになっていた。主人公の僕の視点で、2人の恋愛模様が描かれます。著者のミン・ジヒョンさんは脚本家としても活躍されています。そのためか、とてもテンポ良くストーリーが進み、会話も生き生きとしています。社会を変えたいという彼女の強い思いと、それを理解できず無自覚なままの僕。2人の関係はどうなるのか。
「日本の読者のみなさんへ」で「日本でもたくさんの読者の皆さんと出会い、より多くの議論と対話を引き出せる本になることを、心から願っています」と著者が書くとおり、本書を読んだ方々の間で様々な議論が展開されればいいなと思います。訳者の加藤慧さんからメッセージをいただきましたので、ご紹介します。

『僕の狂ったフェミ彼女』は、フェミニズムに対して漠然とした反感を持つ「普通の」韓国人男性である主人公が、フェミニストになった元恋人の「彼女」と偶然再会し、再び恋愛をする物語です。立場の違う二人がぶつかり合う様子は、男女の「世界の見え方の違い」を浮き彫りにします。理屈抜きの「好き」という気持ちは同じはずなのに、考えはどこまでも平行線な二人。そのやりとりに、もどかしさとともに既視感を覚える方も多いと思います。恋愛をするなかで違和感を覚えたことのある方なら特に、彼女の言動に大いに共感し、勇気づけられるはずです。
一方で、煙草を吸い、性に積極的で、着飾ることをしないなどの彼女の振る舞いに、主人公ほどではないにしても、少なからず驚きを感じる方もいるかもしれません。彼の目に異常なものとして映る彼女のそれらの行動は、男性には当たり前に許されてきたものばかりです。この小説は、私たちの意識の奥深くに社会によって刷り込まれている、こうしたアンコンシャス・バイアスに気づかせてくれます。
巧みにちりばめられた多くのメッセージや問いを受け取って、ぜひまわりの人と話をしてみていただけたら嬉しいです。愛を信じる著者の辛辣ながらもあたたかい視線を感じるこの物語が、たくさんの「彼女」、そして「僕」に届くことを願っています。(加藤慧)

『僕の狂ったフェミ彼女』(ミン・ジヒョン/ 著、加藤慧/訳、イースト・プレス)