『誘拐の日』(チョン・ヘヨン/著 米津篤八/訳 ハーパーBOOKS)

次世代スリラー作家として韓国で注目を浴びているチョン・ヘヨン作家の『誘拐の日』(米津篤八/訳)がハーパーBOOKSより刊行されました。元妻にそそのかされ、難病の娘の手術費を捻出しようと誘拐を企てるミョンジュン。金持ちの娘ロヒをターゲットにして実行に移った途端、彼女を車ではね、記憶喪失にさせてしまう。そんな矢先にロヒの両親が遺体で発見され・・・・・・。絶体絶命のミョンジュンに危機がこれでもかと重なっていく。気弱で要領が悪くてどこか憎めないミョンジュンと、頭の回転が速く、口も達者な天才少女ロヒ。二人のやり取りは軽妙で、大変なはずの逃避行は笑いを呼ぶ。あちらこちらに様々な伏線があるのだけど、最後にびしっと1本にまとまって、読後感が不愉快でないミステリーです。訳者の米津篤八さんからメッセージを頂戴しましたのでご紹介します。

豪邸を舞台に立て続けに起きた誘拐事件と凄惨な殺人事件。社会の闇を背景にしたおどろおどろしいストーリーを想像していると、見事に裏切られます。お人好しで間の悪い誘拐犯ミョンジュンと大人びた天才少女ロヒの奇妙な逃避行は、極上のロードムービーを見るようです。あちこちに思わぬ仕掛けがちりばめられ、翻訳しながらも次の展開が気になって、ページを繰る手が止まりませんでした。ラストには驚きの謎解きが――。すでにドラマ化も決定しているそうです。濃いキャラがたくさん登場しますので、ぜひ自分なりのキャストを想像しながら、ビールでも片手に楽しんでいただけたら幸いです。(米津篤八)

『誘拐の日』(チョン・ヘヨン/著 米津篤八/訳 ハーパーBOOKS)