『第九の波』(チェ・ウンミ/著 橋本智保/訳 書肆侃侃房)

書肆侃侃房の「韓国女性文学シリーズ」8作目として刊行されたチェ・ウンミの『第九の波』(橋本智保訳)
このシリーズは、韓国の女性作家の文学作品を通して、韓国の現代(いま)を生きる女性たちが、どんな時代を生き、どんな思いで暮らしているのか、韓国社会の光と闇にスポットライトを当てた作品群です。ソン・イナという女性主人公を通して、原子力発電所の誘致をめぐる住民同士の対立、元請けと下請けの対立、会社と被解雇者の対立など、様々な対立が渦巻く街、陟州(チョクチュ)の暗部を白日のもとにさらしていく本作品は、まさしくこのシリーズにふさわしいものです。サスペンスの要素も、ラブストーリーの要素もあり、様々にたのしめる作品です。
訳者の橋本智保さんにメッセージを寄せていただきましたので、ご紹介します。

『第九の波』の舞台となっている陟州(チョクチュ)は、海と山に囲まれた美しい町です。
ここでは原子力発電所の誘致をめぐって、賛成・反対派が激しく対立していました。住民の96.9%が賛成したと偽の署名リストを捏造してまで、原子力発電の建設を強行しようとしたのは、陟州市長――かつて陟州の経済発展を担ってきたセメント会社の社長でした。薬に依存して生きている人たちを狙ったカルト宗教団体が暗躍し、いろいろ見えない権力に操られているこの町は、著者チェ・ウンミの作りあげた架空の空間ですが、2012年、江原道のある町で実際に起こった事件がモデルになっています。
湾岸道路が走り、保健所、ゾウ山、ユリ谷のある町の様子がリアルに描かれ、しかも登場人物たちはみんなひと癖ある人たちばかりですので、読み進めるにつれ陟州という町とそこで暮らす人たちに親しみを感じていただけるのではないでしょうか。
陟州の地に戻ってきた3人の男女の恋の行方もお楽しみください。

『第九の波』(チェ・ウンミ/著 橋本智保/訳 書肆侃侃房)