はじめて読むじんぶん童話シリーズ⑤

 はじめて読むじんぶん童話シリーズの5作目『マザー・テレサのいる動物病院』(キム・ハウン著 藤原友代訳)をご紹介します。
 デチョルは、ペットの犬さえも、ゲームのアイテムのように何のためらいもなく捨ててしまうゲーム中毒の少年です。ある日、動物病院の院長をしているテレサおばさんに出会います。傷ついた動物の治療や、捨て犬を救うなど、テレサおばさんの仕事を手伝いながら、生命の大切さ、共に生きること、人を助けることの喜びを学んでいきます。
 マザー・テレサの生き方を通して思いやりや分かち合いの大切さを学ぶ愛の物語です。

『マザー・テレサのいる動物病院』                                    マザーテレサ 

「みんな、自分が生きることに精一杯なのよ。だけど、そんな人たちが、忙しさを言い訳に投げ出してしまったもの、なんだかわかるかい?」
「もしかして、心?」
「どんな心?」
「人を助けようとする心」
「そうよ、正解。それを奉仕というの。自分だけよければそれでいいっていうなら、簡単よね。だけど、自分が困ったときは、だれが助けてくれるかしら? 誰かを助けてあげれば、助けられる人だけじゃなく、助ける人も幸せになれるのよ」
(本文63~64ページ)
                  
「おばさんがノーベル平和賞をもらったっていう、あのシスターなの? マザー・テレサなの?」
「平和賞だなんて、いい言葉だね。デチョルは平和ってなんだと思う?」
「戦争がないことじゃない?」
「それも間違いではないけれど、それは、とっても小さな平和の一部にすぎないよ。今は、戦争がないところでも、平和じゃないことが多いからね。私が誰か、なんてことより、平和を守るために、平和のじゃまをするような行動をなくすことのほうが大切なんだよ」
(中略)
「じゃあ、ぼくが友だちを叩いたり、セボムを捨てようとしたりしたこと、あれは戦争だったんだね」
「そうね。だけど、おまえは行動を変えたでしょう。そうやって、行動を変えていきながら平和を手に入れなくちゃいけないのよ。平和は向こうから勝手に転がってくるような幸運とはちがうの」
(本文133~136ページ)

 

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