はじめて読むじんぶん童話シリーズ①

 韓国では近年、すばらしい児童書が数々出版されていて脚光を浴びています。『日本語で読みたい韓国の本-おすすめ50選』でも児童書を紹介してきていますが、その中から翻訳、出版された作品もあります。彩流社から出版されている『はじめて読むじんぶん童話シリーズ』もそのような作品のひとつです。

 本シリーズは、哲学を始めとする文学・芸術などの分野で、大いなる 実績を残した偉人たちが子どもたちの隣人となり、子どもたちの悩みを聞きながらさまざまな知恵をつけるコンセプトの童話です。偉人たちを、身近なおばさんやおじさんに据えておくことで、偉人たちの教えや思想などに親しみを覚えることができます。韓国では刊行直後、児童分野のベストセラーになり、いまでもその人気は続いています。
 日本では、①『トルストイのいる古本屋』(クォン・アン著 桑畑優香訳)②『シェイクスピアのいる文房具店』(シン・ヨンラン著 小栗章訳)、③『アリストテレスのいる薬屋』(パク・ヒョンスク著 古川綾子訳)、④『マザー・テレサのいる動物病院』(キム・ハウン著 藤原友代訳)、⑤『ソクラテスのいるサッカー部』(キム・ハウン著  崔真碩訳)の5冊が出版されました。
 今回は、『トルストイのいる古本屋』をご紹介します。

『トルストイのいる古本屋』                                 61STbr3EkqL._SX353_BO1,204,203,200_

「ところで、ウンビョルはなぜ本を読むのかな?」
おじいさんは、次々と質問を投げかけます。
「本を読むのは楽しいし、読んだ後にいろいろ感じることがあるから」
「もうひとつあるだろう?」
 おじいさんは、高い鼻を手でこすりながら言いました。
「もうひとつ?」
「いろいろ感じて心が動かされるのも大事だが、それだけで終わってはダメだ。本で学んだことを生きていくうえで実践していくことが重要なんだよ。『人はなんで生きるか』と『イワンのばか』で、〈無条件に与える愛〉と〈自分の心を律することの大切さ〉を知っただろう。『ハックルベリー・フィンの冒険』では、友情について学んだはずだ。それを実際の生活に生かす努力をしないといけないよ」
 ウンビョルはおじいさんがなぜ本の話をしたのか、やっと気づきました。
「じゃあ、わたしだけいつもがまんしろっていうの?」
「そうじゃない。人と自分は違うということを受け入れようと言っているのさ。考えてごらん。君にもソンイにもそれぞれの立場がある。お互いに意地を張っていたら、絶対に仲直りできないよ。相手が何かを主張しているときは、それを受け入れてあげるようにするんだよ」
(本文57~58ページ)

「わたしたちは今、険しい坂を上っている。でも、もう少しがんばれば、下り坂が見えてくるはず。寒い冬が過ぎれば花が咲くように、わたしたちの生活も同じだとトルストイは小説を通じて教えてくれているのよ。わたしたちは今、美しくすてきな香りがする花を咲かせるために、厳しい冬に耐えている。わかるでしょ?」
ママはほほえみながらウンビョルを見つめました。
(本文151ページ)

修正_トルストイ1-1

修正_トルストイ2