
教保文庫の2026年5月の月間ベスト10および注目の新刊(韓国小説)をご紹介します。
中学3年生で発表したデビュー作『시한부(余命)』がベストセラーになり、Z世代を代表する若手作家として注目を集めている作家、ペク・ウンビョルの新作が初登場で7位にランクインしました。注目の新刊では、邦訳も多数刊行されているキム・スムの長編小説と、俳優であり作家としても活躍するチャ・インピョの新作を取り上げています。
1位:『안녕이라 그랬어(アンニョン、と言った)』キム・エラン著(文学トンネ/2025.6.20)
2位:『자몽살구클럽(チャモンサルグクラブ/グレープフルーツアプリコットクラブ)』ハンロロ著(オーセンティック/2025.7.25)
3位:『모순(矛盾)』梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
4位:『제17회 젊은작가상 수상작품집2026(第17回若い作家賞受賞作品集2026)』キム・チェウォンほか著(文学トンネ/2025.3.31)
5位:『급류(急流)』チョン・デゴン著(民音社/2022.12.22)
6位:『혼모노(ホンモノ)』ソン・ヘナ著(チャンビ/2025.3.28)
7位:『나의 사탄(私のサタン)』ペク・ウンビョル著(ウィズダムハウス/2026.04.29)
ウィズダムハウスが手掛ける中・短編小説WEFICシリーズの第101作。高校生のソジョンは、読書会で出会った「Y」に次第に心を奪われていく。名前も連絡先も知らないまま、週に一度だけ共有する秘密めいた時間。しかし、教会ではその感情は「罪」だと教えられる。「愛することが本当に罪なのか」。信仰心と恋心のあいだで揺れ動く少女の痛みを描いた物語。
8位:『나의 완벽한 장례식(私の完璧なお葬式)』チョ・ヒョンソン著(ブックロマンス/2026.1.21)
9位:『소년이 온다(少年が来る)』ハン・ガン著(チャンビ/2014.5.19)邦訳版『少年が来る』(井出俊作訳/クオン)
10位:『수족관(水族館)』ユ・レヒョク著(2024.01.11)ポスターショップ
注目の新刊は以下のとおりです。
『딸기 이론(苺理論)』キム・スム著/民音社/2026.5.29
韓国のいちご農園で働くミャンマー人女性シャッペは、同じ農園で最も弱い立場に置かれているカンボジア人労働者のボパに宛てて手紙を書く。シャッペは、苺を摘む自分の手から、他の農場で働く女性たちの手、危険な労働にさらされる手、遠く故郷で魚をさばく母の手に思いを巡らせ、言葉を紡ぐ。彼女は苺を通して世界を理解しようと、仮説を立て、分析し、そうして「苺理論」が形づくられていく。
社会の周縁に置かれた人々の声なき声を丁寧にすくい上げる作風で知られる著者の作品は、『Lの運動靴』(中野宣子訳/アストラハウス/2022)や『さすらう地』(岡裕美訳/新泉社/2022)など邦訳も多数刊行されています。
『우리동네 도서관(町の図書館)』チャ・インピョ著/サユワゴンガム/2026.5.27
俳優でありながら作家としても活躍するチャ・インピョの新作長編小説。主人公の「私」は小説家で、毎日、町の図書館に通って執筆に向き合っている。しかし創作は行き詰まり、ベストセラー作家になりたいという欲望にも揺れ、書くことの意味そのものに疑問を抱き始める。やがて作中作の「龍」が「私」の前に現れ、二つの世界が交差していく――。俳優としての長いキャリアと作家としての経験が響き合う、「創作」の意味を見つめ直すメタフィクションです。(文/高上由賀)
