
教保文庫の2026年4月の月間ベスト10および注目の新刊(韓国小説)をご紹介します。
第3位に初登場で『第17回若い作家賞受賞作品集2026』がランクインし、今年も大きな話題を呼んでいます。受賞作が一冊の作品集として刊行されるのは韓国では親しまれているスタイルで、日本の文芸誌中心のかたちとはまた違った文学賞文化が感じられます。注目の新刊では、韓国SFを牽引するキム・チョヨプの新作短編集を取り上げています。
1位:『자몽살구클럽(チャモンサルグクラブ/グレープフルーツアプリコットクラブ)』ハンロロ著(オーセンティック/2025.7.25)
2位:『안녕이라 그랬어(アンニョン、と言った)』キム・エラン著(文学トンネ/2025.6.20)
3位:『제17회 젊은작가상 수상작품집2026(第17回若い作家賞受賞作品集2026)』キム・チェウォンほか著(文学トンネ/2025.3.31)
「若い作家賞」はデビュー10年以内の作家がその年に発表した短・中編の中から最も優れた作品を選ぶ韓国の文学賞で、本作品集には7編の物語が収められています。大賞を受賞したキム・チェウォンの「별 세 개가 떨어지다(みっつの星が落ちる)」は、いとこ同士の私とヘイムが長らく連絡の途絶えている祖父を探しに行くことをきっかけに、家族史にまつわる傷を分かち合う物語です。作家のク・ビョンモは本作について「純粋に読む喜びを与えると同時に、まるで以心伝心に近い感情の共鳴を生み出す作品」と評しています。
4位:『모순(矛盾)』梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
5位:『나의 완벽한 장례식(私の完璧なお葬式)』チョ・ヒョンソン著(ブックロマンス/2026.1.21)
6位:『작별하지 않는다(別れを告げない)』ハン・ガン著(文学トンネ/2021.9.9)邦訳版『別れを告げない』(斎藤真理子訳/白水社)
7位:『혼모노(ホンモノ)』ソン・ヘナ著(チャンビ/2025.3.28)
8位:『급류(急流)』チョン・デゴン著(民音社/2022.12.22)
9位:『세종의 나라 1(世宗の国 上)』キム・ジンミョン/イタブックス/2026.2.24
10位:『소년이 온다(少年が来る)』ハン・ガン著(チャンビ/2014.5.19)邦訳版『少年が来る』(井出俊作訳/クオン)
注目の新刊は以下のとおりです。
『해파리 만개(クラゲ満開)』キム・チョヨプ作/パク・ジスク挿画・漫画/マウムサンチェク/2026.4.30
『행성어 서점(惑星語書店)』(邦訳:カン・バンファ訳/早川書房/2025)以来、5年ぶりとなる著者2作目の短編集。プラスチック片やビニールの切れ端から生まれたクラゲが都市を覆い尽くす「해파리 만개에 관한 기록(クラゲ満開に関する記録)」をはじめ、全6編からなる小説集です。使い道のないものは本当に使い道がないのだろうか――。存在の理由とは何か――。規定不能な存在との出会いを通じて、私たちが世界をどう理解し、どのように線引きしてきたのかを問いかけます。挿画が多めで、随所に添えられた幻想的なイラストが作品世界を視覚的に広げ、より立体的な読書が楽しめる一冊です。(文/高上由賀)
