
教保文庫の2025年4月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。今年で16回目を迎えた若い作家賞の作品集が初登場で2位にランクインしました。注目の新刊では、映画の公開で再注目されているオカルト小説や、若手作家が現代韓国の労働事情を描いたお仕事アンソロジーをとりあげています。
1位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
2位:『제16회 젊은작가상 수상작품집2025(2025第16回若い作家賞受賞作品集)』ペク・オニュ他著(文学トンネ/2025.4.2)
今年で第16回を迎える若い作家賞は、デビューから10年以内の若手作家がその年に発表した短編小説の中から現代の問題意識を最も鋭く捉えた作品に焦点を当てて選定され、今年はペク・オニュ、カン・ボラ、ソ・ジャンウォン、ソン・ヘナ、ソン・ヘリョン、イ・ヒジュ、ヒョン・ホジョンの7名が受賞、大賞にはペク・オニュが選ばれました。
3位:『소년이 온다(少年が来る)』ハン・ガン著(チャンビ/2014.5.19)邦訳版『少年が来る』(井出俊作訳/クオン)
4位:『작별하지 않는다(別れを告げない)』ハン・ガン著(文学トンネ/2021.9.9)邦訳版『別れを告げない』(斎藤真理子訳/白水社)
5位:『급류(急流)』チョン・デゴン著(民音社/2022.12.22)
6位:『채식주의자(菜食主義者)』ハン・ガン著(チャンビ/2022.3.28)邦訳版『菜食主義者』(きむふな訳/クオン)
7位:『흰(全ての白いものたちの) 改訂版』ハン・ガン著(文学トンネ/2025.3.31)邦訳版『全ての白いものたちの』(斎藤真理子訳/河出文庫)
8位:『홍학의 자리(紅鶴の場所)』チョン・ヘヨン著(エリクシル/2021.7.26)
9位:『나는 소망한다 내게 금지된 것을(私は望む 私に禁止されたことを)』梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2019.4.20)
10位:『파과(破果)』ク・ビョンモ著(ウィズダムハウス/2018.4.16)
注目の新刊は以下のとおりです。
『퇴마록 국내편 1(退魔録 国内編1)』イ・ウヒョク著(バンタ/2025.4.2)
1994年に単行本で刊行された韓国オカルト文学の代表作です。主人公たちが悪霊や邪悪な敵と闘いながら成長していくストーリーで、国内編、世界編、混世編、末世編の4部で構成され、累計販売部数は1000万部を超える大ヒットを記録しました。今年、この作品を原作としたアニメ映画が公開され大ヒットしたことで、原作の書籍にも再び注目が集まっています。
『포기할 자유(手放す自由)』イ・ジェグ著(アマゾンブックス/2025.4.21)
3世代にわたる家族の盛衰を軸に、人間の欲望と弱さ、嫉妬心が個人の人生をいかに支配するかを描いた小説です。兄弟間の対立や金銭への執着が物語の中心となっており、現代社会における家族の在り方と生き方を問う作品です。
『내가 이런 데서 일할 사람이 아닌데(こんなところで働く人じゃないのに)』キム・ドンシク、ソ・スジン、イェ・ソヨン、ユン・チギュ、イ・ウンギュ、チョ・スンニ、ファン・モガ、ファン・シウン著(文学社会トンネ/2025.5.1)
作家チャン・ガンミョンの発案で、現代韓国で働く普通の人の生活をリアルに執筆するという規則のもとに結成された「月給リアリズム」による3作目のアンソロジーです。
「サルモク(米食い):キーボード農家」キム・ドンシク著
大学を出て中小企業に就職したものの体調不良と人間不信に陥り退職した主人公のキム・ナムウは、ゲーム内のアイテムを売って現金収入を得る、通称「쌀먹(サルモク:意味 米食い)」で生計を立てていた。ところがあるとき恋に落ちた彼は、正規の職を得て彼女に告白したいと思い始める。しかし、サルモクから抜け出すことは想像以上に困難だった。
このほか、労働の理想と現実の間で葛藤する人々を描いた8編の物語が収められています。(文/高上由賀)