
教保文庫の2025年3月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。2月末に発売されたばかりのペク・スリンの新刊が10位にランクインしました。注目の新刊では大人気のファンタジー小説の最新刊や、注目の若手作家ソン・ヘナの小説集をとりあげています。
1位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
2位:『소년이 온다(少年が来る)』ハン・ガン著(チャンビ/2014.5.19)邦訳版『少年が来る』(井出俊作訳/クオン)
3位:『급류(急流)』チョン・デゴン著(民音社/2022.12.22)
4位:『채식주의자(菜食主義者)』ハン・ガン著(チャンビ/2022.3.28)邦訳版『菜食主義者』(きむふな訳/クオン)
5位:『작별하지 않는다(別れを告げない)』ハン・ガン著(文学トンネ/2021.9.9)邦訳版『別れを告げない』(斎藤真理子訳/白水社)
6位:『홍학의 자리(紅鶴の場所)』チョン・ヘヨン著(エリクシル/2021.7.26)
7位:『나는 소망한다 내게 금지된 것을(私は望む 私に禁止されたことを)』梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2019.4.20)
8位:『구의 증명(クの証明)』チェ・ジニョン著(ウネンナム/2023.4.26)
9位:『그 개와 혁명(제 48회 이상문학상 작품집 2025년)(その犬と革命 48回李箱文学賞作品集2025年)』イェ・ソヨン他著(タサンチェッパン/2025.2.18)
10位:『봄밤의 모든 것(春の夜のすべて)』ペク・スリン著(文学と知性社/2025.02.28)
注目の新刊は以下のとおりです。
『봄밤의 모든 것(春の夜のすべて)』ペク・スリン著(文学と知性社/2025.02.28)
『惨憺たる光』(カン・バンファ訳/書肆侃侃房/2019)『静かな事件』(李聖和訳/クオン/2019)、『夏のヴィラ』(カン・バンファ訳/書肆侃侃房/2022)で知られる著者の新作短編集です。娘とも疎遠になり一人寂しく暮らしていた70代の女性オンミが娘婿からオウムを託され、不慣れな飼育をすることで自身の子育て期を回想していく「うららかな日々」の他、6編の物語が収められています。作家は「冬の真っ只中にあっても春は来ると信じることはできるという気持ちでこれらの小説を書いた」と語っており、空虚な日々を過ごしていた人々がふとしたきっかけで変わっていく姿が描かれています。
『소설 보다:봄2025(小説ポダ:春2025)』カン・ボラ他著(文学と知性社/2025.03.14)同社が年4回「この季節の小説」を選定し刊行しているシリーズです。2025年春号にはカン・ボラの「バウアーの庭園」、ソン・ヘナの「スムーズ」、ユン・ダンの「残りの夏」の3編と作家のインタビューが収められています。
『혼모노(本物)』ソン・ヘナ著(チャンビ/2025.3.28)
数々の文学賞を受賞し、読者からの人気も高い注目の若手作家ソン・ヘナの小説集で、若い作家賞を受賞した「ギルティクラブ」など7編の小説が収録されています。李孝石(イヒョソク)文学賞を受賞した表題作「本物」は、ホンモノと名乗って他人になりすました正体不明の人物が起こす連続事件を、主人公の人気作家が解き明かそうとするミステリー小説です。
『오백 년째 열다섯 4 : 구슬의 미래(五百年目の十五歳 4:狐玉の未来)』キム・ヘジョン著(ウィズダムハウス/2025.04.09)
古朝鮮の建国神話と昔話に由来する野狐(ヤホ)族と虎(ホラン)族が人間界にまぎれて生きる、青少年向けの大人気ファンタジー小説の最新刊です。日本語で読める著者の作品に『ファンタスティックガール』(清水知佐子訳/小学館/2002)があります。(文/高上由賀)