
教保文庫の2025年1月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。ハンガン作品と昨年刊行の作品が10位までを占めましたが、1月に刊行された作品も20位圏内にランクインしており、今後の動きに注目です。注目の新刊で今月18位にランクインしたSF作家チョン・ボラの新作と、20位にランクインしたチョン・セランによる歴史ミステリーを紹介しています。
1位:『소년이 온다(少年が来る)』ハン・ガン著(チャンビ/2014.5.19)邦訳版『少年が来る』(井出俊作訳/クオン)
2位:『채식주의자(菜食主義者)』ハン・ガン著(チャンビ/2022.3.28)邦訳版『菜食主義者』(きむふな訳/クオン)
3位:『작별하지 않는다(別れを告げない)』ハン・ガン著(文学トンネ/2021.9.9)邦訳版『別れを告げない』(斎藤真理子訳/白水社)
4位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
5位:『급류(急流)』チョン・デゴン著(民音社/2022.12.22)
6位:『흰(全ての白いものたちの)』ハン・ガン著(文学トンネ/2018.4.25)邦訳版『全ての白いものたちの』(斎藤真理子訳、河出書房)
7位:『희랍어 시간(ギリシャ語の時間)』ハン・ガン著(文学トンネ/2011.11.10)邦訳版『ギリシャ語の時間』(斎藤真理子訳/晶文社)
8位:『두 사람의 인터내셔널(2人のインターナショナル)』キム・ギテ著(文学トンネ/2024.5.15)
9位:『이중 하나는 거짓말(どれかひとつは嘘)』キム・エラン著(文学トンネ/2024.8.27)
10位:『구의 증명(クの証明)』チェ・ジニョン著(ウネンナム/2023.4.26)
注目の新刊は以下のとおりです。
『너의 유토피아(あなたのユートピア)』チョン・ボラ著(ラビットホール/2025.1.15)
『呪いのウサギ』が国際的に話題となり、最も邦訳が待たれる作家の一人である作家チョン・ボラによる2作目の小説集です。本作は2021年に刊行された『彼女に会う』の改訂版で、英訳版がアメリカのSF文学賞であるフィリップ・K・ディック賞候補にノミネートされ話題を呼んでいます。人類が絶滅した世界に残された自動車とロボットが、荒れ果てた世界で冒険を繰り広げる表題作「あなたのユートピア」をはじめ、喪失や哀しみを抱きながらよりよい明日に向かって行動する姿を描いた短編小説が8編収められています。
『설자은, 불꽃을 쫓다(ソルジャウン、花火を追う)』チョン・セラン著(文学トンネ/2025.1.20)
代表作『フィフティピープル』(斎藤真理子訳/亜紀書房/2018年)をはじめとして既に10作品が邦訳刊行されるなど、日本にも多くのファンをもつ著者による歴史ミステリーシリーズの第2巻です。統一新羅時代の首都金城(クムソン)を背景に、王室の役人となった主人公のソルジャウンが、周辺でおこるミステリアスな事件を解決していくストーリーです。
『현실 온라인 게임(現実オンラインゲーム)』キム・ドンシク著(ハッブル/2025.1.29)
ショートショートの名手で『世界で一番弱い妖怪』(吉川凪訳/小学館/2021)が邦訳刊行されているキム・ドンシクの短編小説集です。もっと特別な存在になりたいと思う「人間のレベルアップに対する欲望」をテーマにしたファンタジー小説が3編収められており、ショートショートとは一味違った魅力が味わえます。
(文/高上由賀)