教保文庫、12月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)

教保文庫の2024年12月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。12月もハン・ガン旋風が勢いを増してランキングを独占する中、話題の作家らによるアンソロジーや海外からも注目されているヒーリング小説など、新刊も続々と刊行されました。注目の新刊で詳しく取り上げています。

1位:『소년이 온다(少年が来る)』ハン・ガン著(チャンビ/2014.5.19)邦訳版『少年が来る』(井出俊作訳/クオン)
2位:『채식주의자(菜食主義者)』ハン・ガン著(チャンビ/2022.3.28)邦訳版『菜食主義者』(きむふな訳/クオン)
3位:『작별하지 않는다(別れを告げない)』ハン・ガン著(文学トンネ/2021.9.9)邦訳版『別れを告げない』(斎藤真理子訳/白水社)
4位:『흰(全ての白いものたちの)』ハン・ガン著(文学トンネ/2018.4.25)邦訳版『全ての白いものたちの』(斎藤真理子訳、河出書房)
5位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
6位:『한강 스페셜 에디션(ハンガン スペシャルエディション)』ハン・ガン著(文学トンネ/2024.12.10)小説『작별하지 않는다(別れを告げない)』『흰(全ての白いものたちの)』『검은 사슴(黒い鹿)』の特別装丁版3冊と筆写用ノート1冊の計4冊がセットになっています。
7位:『희랍어 시간(ギリシャ語の時間)』ハン・ガン著(文学トンネ/2011.11.10)邦訳版『ギリシャ語の時間』(斎藤真理子訳/晶文社)
8位:『급류(急流)』チョン・デゴン著(民音社/2022.12.22)
9位:『디 에센셜: 한강(ジ・エッセンシャル)』ハン ガン著(文学トンネ/2023.6.1)長編小説『ギリシャ語の時間』の他、短編小説2編、エッセイ8編、詩5編が収録されています。
10位:『바람이 분다 가라(風が吹く 行け)』ハン ガン著(文学と知性社/2010.2.26)将来を嘱望されていた女性画家の死をめぐる疑惑と真実を証明するために全身全霊で立ち向かい傷つく人々を描いた長編小説で、第13回東里文学賞受賞作です。

注目の新刊は以下のとおりです。
『너무 길지 않게 사랑해 줘(あまり長すぎないように愛して)』カン・ジヨン、ミン・ジヒョン他著(イージーブック/2024.12.02)
ドラマ「殺し屋たちの家」の原作『살인자의 쇼핑몰(殺人者のショッピングモール)』(未邦訳)の著者カン・ジヨンや『僕の狂ったフェミ彼女』(加藤慧訳/イーストプレス)の著者ミン・ジヒョンら5名の作家による「シンドローム」がテーマのアンソロジーです。

『타운하우스(タウンハウス)』チョン・ジヨン著(チャンビ/2024.12.03)
韓国新人作家の登竜門である新聞社の「新春文芸」で2023年に、韓国日報と朝鮮日報の二冠を達成して話題を集めた作家の初の小説集です。夫が所属部隊で起きた事件の隠蔽に加担していたことを知った妻が主人公の「쥐(ネズミ)」、突然の豪雨によって息子を失くした夫婦を描く「난간에 부딪힌 비가 집안에 들이쳤지만(欄干にあたった雨が降り込んできたけれど)」の新春文芸選定作2作を含む8編の短編が収められており、どの作品も日常生活の亀裂に不安を感じている登場人物や壊れていることに気づきながらも表には出さずもがく人々の姿が描かれています。

『시간이 멈춰 선 화과자점, 화월당입니다(時が止まった和菓子屋、花月堂(ファウォルダン)でございます)』イ・オンファ著(ダイブ/2024.12.11)
主人公のヨンファが亡き祖母から託された代々続く和菓子屋「花月堂」。夜10時から2時間だけ営業するこの秘密めいた店を訪れた人たちは、買い求めた和菓子から大切な亡き人の想いを受け取ります。本作は不思議な和菓子店を舞台に繰り広げられるヒーリング小説で、フランクフルト図書展にて話題を集め、刊行前に海外からも熱い視線を浴びていた一冊です。

『소원을 이루어주는 섬(願いを叶えてくれる島)』ユ・ヨングァン著(クレイハウス/2025.1.3)
クラウドファンディングで自費出版した『トッケビ梅雨時商店街』(岩井理子訳/静山社/2024)が韓国で10万部超のベストセラーとなっている著者の新作長編小説です。それぞれ困難を抱える4人の主人公が「どんな願いも叶えてくれる島」を目指して旅に出る、勇気と希望の冒険ファンタジーです。(文/高上由賀)