教保文庫、8月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)

教保文庫の2024年8月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。日本でも人気のキム・エランやチョン・ユジョンの新作長編小説が月末に相次いで刊行され早くもランクインした他、建築家で作家のペク・ヒソンによる初の小説も刊行され話題を集めています。

1位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
2位:『이중 하나는 거짓말(どれかひとつは嘘)』キム・エラン著(文学トンネ/2024.8.27)
3位:『홍학의 자리(紅鶴の場所)』チョン・ヘヨン著(エリクシル/2021.7.26)
4位:『영원한 천국(永遠なる天国)』チョン・ユジョン著(ウネンナム/2024.8.28)
5位:『구의 증명(クの証明)』チェ・ジニョン著(ウネンナム/2023.4.26)
6位:『우리에게 남은 시간 46일(私たちに残された時間46日)』イ・ソル著(ハイスト/2024.1.29)
余命宣告を受けたヘインと最後まで彼女に寄り添う恋人イヒョンの悲しい愛の物語。
7位:『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(桜エディション)キム・ホヨン著(ナムヨプウィジャ/2021.4.20)
8位:『빛이 이끄는 곳으로(光の導く場所へ)』ペク・ヒソン著(ブックロマンス/2024.8.21)
9位:『나의 돈키호테(私のドンキホーテ)』キム・ホヨン著(ナムヨプウィジャ/2024.4.25)
10位:『채식주의자(菜食主義者)』ハン・ガン著(チャンビ/2022.3.28)

注目の新刊は以下のとおりです。
『이중 하나는 거짓말(どれかひとつは嘘)』キム・エラン著(文学トンネ/2024.8.27)
韓国の文学賞を数多く受賞し日本にもファンの多いキム・エランの『どきどき僕の人生』(きむふな訳、クオン)以来13年ぶりとなる新作長編小説。いくつかの偶然が重なって互いの秘密を知った高校2年生のジウ、ソリ、チェウンの3人が、好感と疑心を抱きながら次第に距離を縮めていく友情の物語です。著者の邦訳作品には『どきどき僕の人生』、『外は夏』(古川綾子訳、亜紀書房、2019)など多くの作品があります。

『영원한 천국(永遠なる天国)』チョン・ユジョン著(ウネンナム/2024.8.28)
『完全なる幸福』(2021/未邦訳)に続く、「欲望」三部作の第二作です。人間の欲望が渦巻く厳しく冷たい野生の世界と、それとは対極にある熱気を帯びた人工知能の世界、二つの世界の間にある第三の世界。これらの三つの世界を行き来しながら一人の男の成長を描き、人間の「生への欲望」を追求するミステリー小説です。著者の邦訳作品には、世界各国で翻訳され、2018年には韓国で映画化された『七年の夜』(カン・バンファ訳/書肆侃侃房/2017)』や『種の起源』(カン・バンファ訳/早川書房)があります。

『빛이 이끄는 곳으로(光の導く場所へ)』ペク・ヒソン著(ブックロマンス/2024.8.21)
パリで住まいを探していた建築家が出会った一軒の古い屋敷には隠された秘密があった。建築家であり作家でもある著者が、自身が10年間過ごしたフランス・パリで実際に調査した「家にまつわるエピソード」を元に創作したフィクションで、建築家ならではの視点で数学的に描かれる家の構造と秘密めいたストーリーとが織りなす感動の物語です。

『소설 한국을 말하다(小説 韓国を語る)』チャン・ガンミョン、クァㇰ・ジェシㇰ、ク・ビョンモ他著(ウネンナム/2024.8.13)
2023年秋から2024年春まで連載された文化日報の企画シリーズ「小説 韓国を語る」をアンソロジーとして刊行した超短編集です。チャン・ガンミョンやク・ビョンモなど韓国を代表する21人の作家が小説という手法で「今の韓国」をノンフィクションよりもリアルに語ります。(文/高上由賀)