教保文庫、6月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)

教保文庫の2024年6月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。5月に注目の新刊で紹介した『두 사람의 인터내셔널(2人のインターナショナル)』が3位にランクインしました。注目の新刊では、今月『구의 증명(クの証明)』が4位にランクインしたチェ・ジニョンの最新作と、邦訳版も刊行されているイ・コンニムの『殺したい子』の続編を取り上げています。
1位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
2位:『나의 돈키호테(私のドンキホーテ)』キム・ホヨン著(ナムヨプウィジャ/2024.4.25)
3位:『두 사람의 인터내셔널(2人のインターナショナル)』キム・ギテ著(文学トンネ/2024.5.15)
4位:『구의 증명(クの証明)』チェ・ジニョン著(ウネンナム/2023.4.26)
5位:『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(桜エディション)キム・ホヨン著(ナムヨプウィジャ/2021.4.20)
6位:『홍학의 자리(紅鶴の場所)』チョン・ヘヨン著(エリクシル/2021.7.26)
7位:『2024제15회 젊은작가상 수상작품집(2024第15回若い作家賞受賞作品集)』キム・メルラ他著(文学トンネ/2024/3.31)
8位:『파과(破果)』ク・ビョンモ著(ウィズダムハウス/2018.4.16)
9位:『룬의 아이들 블러디드 7(ルーンの子供たち ブラディッド7)』ジョン・ミョンヒ著(エリクシル/2024.5.30)
オンラインゲーム『テールズウィーバー』の原作でもあるSFファンタジー小説、シリーズ第3部の最新巻です。シリーズ第1部「デモニック」と第2部「冬の剣」は邦訳版が刊行されています(酒井君二訳/宙出版)。
10位:『채식주의자(菜食主義者)』ハン・ガン著(チャンビ/2022.3.28)

注目の新刊は以下のとおりです。

『쓰게 될 것(書くことになること)』チェ・ジニョン著(アノンブックス/2024.6.14)

数々の文学賞を受賞し、『구의 증명(クの証明)』もロングセラーとなっている気鋭の作家チェ・ジニョンの短編小説集です。2020年から2023年に発表された8つの短編からなる本作では、気候危機、戦争、AI、女性の権利と歴史、格差社会といった現代社会が抱える問題に真正面から向き合いながらこれからの未来について、著者が「今この時代に書かずにはいられなかったこと」が綴られています。

『죽이고 싶은 아이 2(殺したい子 2)』イ・コンニム著(ウリハッキョ/2024.7.1)
校舎裏で起こった女子高生殺害事件を巡り、容疑者となった親友と周辺の人々の証言で構成された小説『殺したい子』(矢島暁子訳/アストラハウス/2023)の続編です。前作が10代の読者から圧倒的な支持を得て韓国内の刊行部数が20万部に迫るなかでの続編刊行に注目が集まっています。前作では事件を通して真実とは何かが問い続けられましたが、本作はその結末の部分から始まって、壊れてしまった人生を立て直していく、絶望の果ての希望が描かれています。著者の邦訳作品は他にも第8回文学トンネ青少年文学賞大賞を受賞した『世界を超えてあなたに会いに行く』(矢島暁子訳/KADOKAWA/2021)があります。(文/高上由賀)