教保文庫、2月の月間ベストと注目の新刊(小説) (韓国通信)

教保文庫の2023年2月の月間ベスト10(国内小説)と注目の新刊情報をご紹介します。『不便なコンビニ』は根強い人気を誇っています。個性的な新刊も続々と刊行されています。

1位:『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(40万部記念 桜エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2021.4.20)
2位:『불편한 편의점2(不便なコンビニ)』(紅葉エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2022.8.10)
3位:『구의 증명(クの証明)』チェ・ジニョン著(ウネンナム/2015.3.30)
4位:『아버지의 해방일지(父の解放日誌)』チョン・ジア著(チャンビ/2022.9.2)
5位:『이토록 평범한 미래(これほどまでに平凡な未来)』キム・ヨンス著(文学トンネ/2022.10.7)
6位:『사랑의 이해(愛の理解)』イ・ヒョクチン著(民音社/2019.4.19)
7位:『하얼빈(ハルピン)』キム・フン著(文学トンネ/2022.8.3)
8位:『홈 스위트 홈(ホーム・スイート・ホーム)』(第46回李箱文学賞作品集2023)チェ・ジニョンほか著(文学思想/2023.2.10)
大賞に選ばれたチェ・ジニョンの「ホーム・スイート・ホーム」と自薦作「ユジン」のほか、優秀作のキム・ギテ、パク・ソリョン、ソ・ソンラン、イ・ジャンウク、チェ・ウンミの5作が収録されています。
9位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
10位:『작별인사(別れの挨拶)』キム・ヨンハ著(ポクポクソガ/2022.5.2)

注目の新刊は以下のとおりです。
『고요한 우연(静かな偶然)』キム・スビン著(文学トンネ/2023.2.20)
ごく平凡な人物の持っている、小さくとも光り輝く力を描いた成長物語です。第13回文学トンネ青少年文学賞大賞受賞作。同賞の過去の受賞作にはイ・コンニム著『世界を超えて私はあなたに会いに行く』(矢島暁子訳/KADOKAWA)、ファン・ヨンミ著『チェリーシュリンプ わたしは、わたし』(吉原育子訳/金の星社)などがあります。また著者は『夏がきらり』で第16回文学トンネこども文学賞大賞も受賞しています。

『버샤(バーシャ)』ピョ・ミョンヒ著(チャンビ/2023.2.24)
『ある日、難民』で権正生文学賞を受賞した著者による青少年小説。失語症を患うイスラム教徒の少女バーシャと家族たちが難民認定審査のため国際空港に滞在するなかで起こる出来事を描いた長編です。空港という空間に対する再発見を通して、難民問題が実は私たちと密接につながっていることを喚起させます。

『환상서점(幻想書店):眠れない夜になりますように』ソ・ソリム著(ハッピーブックトゥーユー/2023.2.28)
書店の店主が聞かせてくれる奇妙な物語と、店主と客のあいだに生まれる感情を描く長編小説。もとはオーディオドラマだったものが好評につき電子ブックとなり、さらに紙の書籍刊行に至った異例のケースとしても注目を集めています。

『인생 박물관(人生博物館)』キム・ドンシク著(ヨダ/2023.3.2)
表題作を含むショートショート25編を収録した、著者の14作目となる小説集。これまで人間の善悪二面性のある本性に注目した作品を多く発表してきましたが、本作は「キム・ドンシク初のハッピーエンド小説集」と謳われるとおり、人間の内面に宿る善良な心を見つめた作品を集めています。小説や読書とは無縁だった著者が仕事中に思い浮かんだ物語をオンラインコミュニティーに投稿したところ人気を集め、翌年末、『世界でいちばん弱い妖怪』(吉川凪訳/小学館)をはじめ小説集3冊を同時刊行したという経緯も興味深いです。(文/牧野美加)