教保文庫、1月の月間ベスト と注目の新刊(韓国通信)

教保文庫の2023年1月の月間ベスト10(国内小説)と注目の新刊情報をご紹介します。1位、2位を占めた『不便なコンビニ』は第1・2巻合わせて100万部を突破しています(2022年11月現在)。2020年代に入って100万部を超えたのは『夢を売る百貨店 本日も完売御礼でございます』(全2巻)、『アーモンド』に続いて3例目だそうです。ク・ビョンモやイ・ドゥオン、ペ・スアなど日本でもおなじみの作家の新刊も刊行されています。

1位:『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(40万部記念 桜エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2021.4.20)
2位:『불편한 편의점2(不便なコンビニ)』(紅葉エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2022.8.10)
3位:『아버지의 해방일지(父の解放日誌)』チョン・ジア著(チャンビ/2022.9.2)
4位:『이토록 평범한 미래(これほどまでに平凡な未来)』キム・ヨンス著(文学トンネ/2022.10.7)
5位:『하얼빈(ハルピン)』キム・フン著(文学トンネ/2022.8.3)
6位:『작별인사(別れの挨拶)』キム・ヨンハ著(ポクポクソガ/2022.5.2)
7位:『구의 증명(クの証明)』チェ・ジニョン著(ウネンナム/2015.3.30)
8位:『사랑의 이해(愛の利害・理解)』イ・ヒョクチン著(民音社/2019.4.19)
2016年に長編『横たわった船』でハンギョレ文学賞を受賞しデビューした著者による長編小説です。銀行を舞台に、4人の男女の揺れ動く恋愛模様が描かれています。2022年12月から23年2月にかけて本作を原作としたドラマ『愛と、利と』が放送されたことで、再び注目を集めました。
9位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
10位:『칵테일, 러브, 좀비(カクテル、ラブ、ゾンビ)』(リカバー版)チョ・イェウン著(安全家屋/2020.4.13)

注目の新刊は以下のとおりです。
『로렘 입숨의 책(ロレム・イプサムの本)』ク・ビョンモ著(アノンブックス/2023.1.31)
ナスカの地上絵のように、読み終わったあと高いところから全体を俯瞰することで初めて真の姿を現す、とも紹介される作品で、14篇の短編からなります。ロレム・イプサムとは、出版やウェブデザインなどの分野で使用されるダミーテキストで、意味をなさない無作為の文章を羅列したものです。著者の邦訳は『四隣人の食卓』(小山内園子訳/書肆侃侃房)に続き、昨年12月に刊行された『破果』(小山内園子訳/岩波書店)も好評を博しています。

『러브 몬스터(ラブモンスター)』イ・ドゥオン著(チャンビ/2023.2.6)
『あの子はもういない』(小西直子/文藝春秋)の著者による新作長編です。病気療養中なのでしばらく連絡しないで、との文字メッセージを残して失踪した母。娘ジミンがその行方を追います。母の通っていた水泳教室のプールを訪ねると、教室の人気講師の車に母が乗り込むのを見たという情報を耳にします。さらに、母の不倫相手の妻で、かつて自分を山中に拉致した女性と再会し……というラブサスペンスです。

『작별들 순간들(別れ 瞬間)』ペ・スア著(文学トンネ/2023.2.10)
「韓国文学史で前例なき異端の作家」とされる著者初の邦訳『遠きにありて、ウルは遅れるだろう』(斎藤真理子訳/白水社)が話題となっています。約15年前から、ベルリン近郊の庭園付きの小屋で執筆するようになったという著者。その小屋に滞在して執筆する時間がだんだん長くなり、いつしか「小屋でものを書くこと」について書いてみたいと思うようになったそうです。そうして始まった、書くことや読むことに関する随筆の連載が本になりました。(文/牧野美加)