教保文庫、7月の月間ベストと注目の新刊(韓国通信)

教保文庫の7月の月間ベスト10(国内小説)と注目の新刊情報をご紹介します。長く上位を占めている『불편한 편의점(不便なコンビニ)』の続編をはじめ、日本でも人気の作家の新作が続々と刊行されています。コロナ時代の世相を反映した作品もあり興味深いです。

1位:『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(40万部記念 桜エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2021.4.20)
2位:『작별인사(別れの挨拶)』キム・ヨンハ著(ポクポクソガ/2022.5.2)
3位:『어서 오세요, 휴남동 서점입니다(いらっしゃいませ、ヒュナム洞書店です)』(夏の森エディション)ファン・ボルム著(クレイハウス/2022.1.17)
4位:『친밀한 이방인(親密な異邦人)』チョン・ハナ著(文学トンネ/2017.10.13)
この作品を原作としたドラマ『アンナ』の配信が6月から始まったことを受け、再び注目を集めています。ある小説家が、自分の小説を盗んだ謎の人物の行方を追う長編小説です。
5位:『달러구트 꿈 백화점(夢を売る百貨店 本日も完売御礼でございます)』(レインボーエディション)イ・ミイェ著(ファクトリーナイン/2020.7.8)
6位:『저만치 혼자서(そこにひとりで)』キム・フン著(文学トンネ/2022.6.1)
7位:『아몬드(アーモンド)』(100万部記念特別版)ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2022.5.12)
8位:『칵테일, 러브, 좀비(カクテル、ラブ、ゾンビ)』(リカバー版)チョ・イェウン著(安全家屋/2020.4.13)
9位:『구의 증명(クの証明)』チェ・ジニョン著(ウネンナム/2015.3.30)
10位:『달러구트 꿈 백화점2(夢を売る百貨店 本日も完売御礼でございます2)』(レインボーエディション)イ・ミイェ著(ファクトリーナイン/2021.7.27)

注目の新刊、近刊は以下のとおりです。
『믿음에 대하여(信じることについて)』パク・サンヨン著(文学トンネ/2022.7.20)
20代の物語『大都市の愛し方』(オ・ヨオンア訳/亜紀書房)、10代の物語『1차원이 되고 싶어(一次元になりたい)』に続く「愛の三部作」の最後の作品で、4編の中短編からなる連作小説です。社会人として職場で奮闘する姿や、人生のパートナーと安定した関係を続けたいと願う30代の生活像を描きます。

『튜브(浮き輪)』ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2022.7.22)
『アーモンド』『三十の反撃』でいずれも本屋大賞翻訳小説部門1位(2020年、22年)に輝き、『プリズム』の邦訳も出たばかりのソン・ウォンピョン(いずれも矢島暁子訳/祥伝社)の新作長編です。著者は偶然ネットの掲示板で「失敗した人が再び成功する物語を推薦してください。自分には今そういう物語が切実に必要です」という書き込みを見かけたのを機に、この作品を書きはじめたといいます。何度も事業に失敗し失意の底にある50代男性が、再び立ち上がって人生を変えていこうとする姿を描きます。

『페퍼민트(ペパーミント)』ペク・オニュ著(チャンビ/2022.7.25)
『ユ・ウォン』(吉原育子訳/祥伝社)でチャンビ青少年文学賞を受賞した著者の新作長編。数年前に流行した伝染病に感染しその後遺症で植物人間になった母親を看病する女性高生シアン。当時家族が「スーパースプレッダー」と目され地域社会から非難を浴び、一家で引っ越していった女子高生ヘウォン。かつて双子のように仲の良かったシアンとヘウォンを中心とした成長物語です。

『하얼빈(ハルピン)』キム・フン著(文学トンネ/2022.8.3)
『黒山』(戸田郁子訳/クオン)や『孤将』(蓮池薫訳/新潮社)などで日本でも知られる著者による新作長編です。長年、執筆を考えていたという、伊藤博文を暗殺した独立運動家・安重根にまつわる歴史小説です。

『불편한 편의점 2(不便なコンビニ2)』キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2022.8.10)
昨年4月の発売以来、大好評を博し、50万部を突破した『불편한 편의점』の続編です。街角の小さなコンビニを舞台とした、個性あふれる人物たちの物語です(文/牧野美加)。