教保文庫、2月の月間ベストと注目の新刊(韓国通信)

教保文庫の2月の月間ベスト10(国内小説)と注目の新刊をご紹介します。チョン・セランの作品が4点ランクインし、うち3作はすでに邦訳が刊行されたか間もなく刊行予定です。1~6位は先月とほぼ同じ並びでした。

1位:『달러구트 꿈 백화점(ダラグート 夢の百貨店)』イ・ミイェ著(ファクトリーナイン/2020.7.8)
2位:『아몬드(アーモンド)』ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2017.3.31)
3位:『시선으로부터,(シソンから、)』チョン・セラン著(文学トンネ/2020.6.5)
4位:『우리가 빛의 속도로 갈 수 없다면(私たちが光の速度で進めないなら)』キム・チョヨプ著(ホブル/2019.6.24)
5位:『보건교사 안은영(保健室のアン・ウニョン先生)』(特別版)チョン・セラン著(民音社/2020.9.11)
6位:『모순(矛盾)』梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
7位:『마음의 부력(心の浮力)』(第44回李箱文学賞作品集)イ・スンウほか著(文学思想/2021.1.22)
8位:『피프티 피플(フィフティ・ピープル)』チョン・セラン著(チャンビ/2016.11.21)
9位:『체리새우: 비밀글입니다(シナヌマエビ:非公開文です)』ファン・ヨンミ著(文学トンネ/2019.1.28)
10位:『지구에서 한아뿐(地球でハナだけ)』(改訂版)チョン・セラン著(ナンダ/2019.7/31) 邦訳本(すんみ訳/亜紀書房)も刊行予定です。

注目の新刊は以下のとおりです。

申京淑(シン・ギョンスク)の長編『아버지에게 갔었어(父のところに行ってきた)』(チャンビ/2021.3.5)。11年ぶり、8作目となる長編小説です。人間の力ではどうしようもない喪失を経てようやく「父」という一人の人間にたどり着く過程を切々と描いています。

チョ・ヘジンの短編集『환한 숨(澄んだ息)』(文学と知性社/2021.3.9)。内面からほとばしるような叙情あふれる作品や社会問題の中で個人が直面する苦悩を描いた作品など全9編を収録しています。

チェ・ジニョンの長編『내가 되는 꿈(わたしになる夢)』(現代文学/2021.2.25)。みずからの存在を消してしまいたいと思うほど深い傷を抱える女性が、幼少時からともに過ごしてきた祖母の死を機に、目を背けてきた過去と向き合い自分の存在の意味を探る過程を描いています。

チョ・イェウンの長編『스노볼 드라이브(スノードームドライブ)』(民音社/2021.2.15)。皮膚に触れると発疹ができ、燃やさない限り溶けない「防腐剤の雪」の降る世界が舞台のディストピア小説。「今日の若い作家」シリーズの1冊です。

『우리는 이 별을 떠나기로 했어(わたしたちはこの星を去ることにした)』。チョン・ソンラン、パク・ヘウル、パク・ムニョン、オ・ジョンヨン、イ・ルカ著(ホブル/2021.3.2)。女性と惑星をテーマにした5人の作家によるSFアンソロジー。1908年、1975年、2019年、2021年の女性たちが時空間を超えて共鳴する物語です。3月8日の「国際女性デー」を記念して刊行されました。

『두 번째 엔딩(二度目のエンディング)』(チャンビ/2021.2.19)。8人の作家によるYA作品のスピンオフ短編を収録しています。キム・リョリョン『優しい嘘』、ペ・ミジュ『シンカー』、イヒョン『1945、鉄原』『あの夏のソウル』、キム・ジュンミ『みんなカモン』、ソン・ウォンピョン『アーモンド』、ク・ビョンモ『バードストライク』、イ・ヒヨン『ペイント』、ペク・オニュ『ユ・ウォン』のその後や、原作ではあまり注目されていなかった人物を中心にした物語です。(文/牧野美加)