教保文庫、9月の月間ベストと注目の新刊(韓国通信)

教保文庫の9月の月間ベストセラー(国内小説)と新刊をご紹介します。1位は根強い人気の『アーモンド』で、著者ソン・ウォンピョンは新作も発表しました。刊行間もないファン・ジョンウンの連作小説集もランクインしました。気になる新作も続々と出ています。

1位:『아몬드(アーモンド)』ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2017.3.31)

2位:『달러구트 꿈 백화점(ダラグート 夢の百貨店)』イ・ミイェ著(ファクトリーナイン/2020.7.8)

3位:『보건교사 안은영(保健室のアン・ウニョン先生)』(特別版)チョン・セラン著(民音社/2020.9.11)

刊行5周年とドラマ化を記念して新たな装幀の特別版が出ました。2010年に短編小説から生まれた「アン・ウニョン」がドラマの主人公になるまでのエピソードを綴った「作家の手紙」も追加されています。

4位:『시선으로부터,(シソンから、)』チョン・セラン著(文学トンネ/2020.6.5)

5位:『우리가 빛의 속도로 갈 수 없다면(私たちが光の速度で行けないならば)』キム・チョヨプ著(ホブル/2019.6.24)

6位:『복자에게(ポクチャへ)』キム・グミ著(文学トンネ/2020.9.9)

7位:『진짜 진짜 얼굴을 찾아서(本当の本当の顔を探して)』(『サイコだけど大丈夫』特別童話5)チョヨン著、チャムサン絵(ウィズダムハウス/2020.8.31)

8位:『여름의 빌라(夏のヴィラ)』ペク・スリン著(文学トンネ/2020.7.7)

9位:『영원의 사자들(永遠の獅子たち) 1』チョン・ウングォル著(パランミディア/2020.9.22)

ドラマ『トキメキ☆成均館スキャンダル』の原作小説の著者チョン・ウングォルによる現代版ファンタジーロマンス。第2巻も同時刊行されました。

10位:『연년세세(年年歳歳)』ファン・ジョンウン著(チャンビ/2020.9.18)

未発表作「무명(無名)」「다가오는 것들(近づいてくるものたち)」を含む4篇の連作小説集。家族や社会、友人、国家などさまざまな関係の中で「わたし」をつくっている世界に対して問いを投げかけます。

小説やエッセイ、詩など注目の新刊をご紹介します。

『프리즘(プリズム)』ソン・ウォンピョン著(ウネンナム/2020.9.15)

『アーモンド』の著者の新作長編。他人に対する無理解や共感できない現実を感覚的な文体で描いた作品。4人の男女の愛について、出会いと別れの過程で幾筋にも分かれる心をさまざまな色彩で照らし出す物語です。

『너라는 생활(君という生活)』キム・ヘジン著(文学トンネ/2020.9.18)

デビュー以降、疎外された人々の生活や、嫌悪と排除の暴力性を正面から捉えてきた著者2作目の短編集。表題作を含む8篇はすべて2人称小説です。著作の邦訳本『娘について』(古川綾子訳/亜紀書房)や『中央駅』(生田美保訳/彩流社)も好評を博しています。

『언니밖에 없네(オンニしかいないね)』(QQクィア短編選3)(QQ/2020.9.16)

1年に1冊、国内の作家の作品を編むクィア文学シリーズ。家族になりたいクィアカップル、老年期の非婚女性の人生、インターセックスが普遍的なジェンダーとなった社会など、現在の韓国社会や文学に必要不可欠な女性、クィアの物語を、キム・ジヨン、チョン・セラン、チョン・ソヨン、チョ・ウリ、チョ・ヘジン、チョン・ヒラン、ハン・ジョンヒョンの7人が描いています。

『김승옥문학상 수상작품집(金承鈺文学賞受賞作品集)2020』キム・グミほか著(文学トンネ/2020.9.28)

大賞受賞作のキム・グミ著「우리는 페퍼로니에서 왔어(私たちはペパロニから来た)」をはじめ、優秀賞を受賞したウン・ヒギョン、クォン・ヨソン、チョン・ハナ、チェ・ウンミ、キ・ジュニョンの作品を収録。

『마음챙김의 시(マインドフルネスの詩)』リュ・シファ編(守吾書齋/2020.9.17)

メキシコの腹話術師、イギリスの禅院長、紀元前1世紀のラビ(ユダヤ教の指導者)やスーフィー(イスラム神秘主義の修行者)の詩をはじめ、パブロ・ネルーダやヴィスワヴァ・シンボルスカといったノーベル文学賞を受賞した詩人、フェイスブックやインスタグラムの新世代詩人、ラダックの寺院の壁に詩を書いた無名の人。古代、中世、現代の詩人による約72篇の詩を編んでいます。谷川俊太郎の「生きる」も含まれています。

『책, 이게 뭐라고(本、なんだってこれが)』チャン・ガンミョン著(arte/2020.9.9)

『韓国が嫌いで』(吉良佳奈江訳/ころから)で知られる著者が、読書ポッドキャストを約2年間配信するなかで出会った本や人、読書共同体についての経験、専業作家の現実的な悩み、将来的な作家としての野望などを率直に綴った40篇のエッセイ。

『좋은 사람에게만 좋은 사람이면 돼(いい人にだけいい人であればいい)』キム・ジェシク著(ウィズダムハウス/2020.9.1)

オンラインコミュニティー「사랑할 때 알아야 할 것들(愛するときに知っておくべきこと)」の運営者として16年間、愛や人間関係についての考えを発信し、200万人のフォロワーに支持されている著者の新作エッセイ集。数行から1ページ程度の短いエッセイが収められています。(文/牧野美加)