教保文庫、5月の月間ベストと注目の新刊(韓国通信)

教保文庫の5月の月間ベストセラー(国内小説)をご紹介します。韓国のクィア文学を代表する作家の一人、キム・ボンゴンによる2作目の小説集がランクインしました。

1位:『제11회 젊은작가상 수상작품집(第11回若い作家賞受賞作品集)』(文学トンネ/2020.4.8)
2位:『아몬드(アーモンド)』ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2017.3.31)
3位:『소년이 온다(少年が来る)』(特別限定版)ハン・ガン著(チャンビ/2020.4.24)
ハードカバー版で、既存の書籍と同じく表紙と背表紙にかすみ草が描かれています。
4位:『우리가 빛의 속도로 갈 수 없다면(私たちが光の速度で行けないならば)』キム・チョヨプ著(ホブル/2019.6.24)
5位:『날씨가 좋으면 찾아가겠어요(天気が良ければ訪ねていきます)』(ドラマ放映記念限定版)イ・ドウ著(時空社/2020.2.1)
6位:『지구에서 한아뿐(地球でハナだけ)』(森エディション)チョン・セラン著(ナンダ/2019.7.31)
再生紙を使用し、環境を害する加工はできるだけ省いて作られた、背表紙のない糸かがり綴じの書籍です。
7位:『시절과 기분(時節と気分)』キム・ボンゴン著(チャンビ/2020.5.1)
同性愛をテーマにした短編集『여름, 스피드(夏、スピード)』に続く2作目の小説集。2018年春から19年夏にかけて発表した全6篇を収録。表題作は「私」がみずからをゲイと認識する前に「最初で最後につきあった女性」ヘインと、7年ぶりに再会したことに始まる物語です。
8位:『사서함 110호의 우편물(私書箱110号の郵便物)』イ・ドウ著(時空社/2016.3.18)
9位:『일의 기쁨과 슬픔(仕事の喜びと悲しみ)』チャン・リュジン著(チャンビ/2019.10.25)
10位:『시하와 칸타의 장: 마트 이야기(シハとカンタの章:マートの話)』 イ・ヨンド著(現代文学/2020.4.25)
“韓国ファンタジーの祖”イ・ヨンドによる新作。地球の滅亡後に再建された世界で、ネズミ捕りの罠にかかった妖精と人間の少女シハとの出会いから始まるファンタジー冒険。韓国で100万部を超えた初の長編『ドラゴンラージャ』シリーズや『フューチャーウォーカー』シリーズ(いずれも、岩崎書店/ホン・カズミ訳)など邦訳本も人気です。

新刊作品では、ノーベル文学賞の有力候補の一人とされる黄晳暎(ファン・ソギョン)の長編『철도원 삼대(鉄道員三代)』(チャンビ/2020.6.5)が注目を集めています。日本による植民地支配から解放前後、21世紀に至るまでの朝鮮半島100年の歴史と、労働者や民衆の生活を描いています。『モレ村の子どもたち』(波多野淑子訳/新幹社)や『パリデギ-脱北少女の物語』(青柳優子訳/岩波書店)など多数の邦訳本があります。

日本でも人気のチョン・セランの長編『시선으로부터,(シソンから、)』(文学トンネ/2020.6.5)も出ました。朝鮮戦争で家族を失い、若くして単身ハワイに向かったシム・シソン。画家を目指してハワイからドイツに渡るも再び韓国に戻る彼女の人生と、彼女の死後、祭祀を行うため12人の家族がハワイに向かう話が交互に描き出されます。シソンと娘、孫の女性三代の物語です。

『82年生まれ、キム・ジヨン』でおなじみのチョ・ナムジュのYA長編『귤의 맛(みかんの味)』(文学トンネ/2020.5.28)も刊行されました。それぞれに心の傷や不安、家庭の事情を抱える多感な女子中学生4人がけんかしたり支え合ったりしながら心の距離を縮めていく物語。迷いや不安の中にいるティーンエージャーへの応援歌のような作品です。

ユン・ソンヒ、ペク・スリン、カン・ファギル、ソン・ボミ、チェ・ウンミ、ソン・ウォンピョンの人気女性作家6人がそれぞれ「ハルモニ」(おばあさん)をテーマに書いた、異色の小説集『나의 할머니에게(私のハルモニへ)』(タサンチェクバン/2020.5.8)も話題です。(文/牧野美加)
2020/06/09 6:08