教保文庫、4月の月間ベスト(韓国通信)

しばらくお休みしていた韓国通信を再開します。6月に予定されていた「ソウル国際ブックフェア」のCOEXでのオフラインイベントが中止されるなど(日程を延期しオンライン中心で開催予定)、今も新型コロナウィルスの影響が各所で感じられますが、可能な範囲で韓国の出版・書店情報をお伝えしていこうと思います。まずは、教保文庫の4月の月間ベストセラー(国内小説)をご紹介します。

1位:『제11회 젊은작가상 수상작품집(第11回若い作家賞受賞作品集)』(文学トンネ/2020.4.8)
大賞を受賞したカン・ファギルの「음복(飲福)」をはじめ、チェ・ウニョン、キム・ボンゴン、イ・ヒョンソク、キム・チョヨプ、チャン・リュジン、チャン・ヒウォンによる計7篇が収録されています。

2位:『날씨가 좋으면 찾아가겠어요(天気が良ければ訪ねていきます)』(ドラマ放映記念限定版)イ・ドウ著(時空社/2020.2.1)
古民家を改造した小さな書店が舞台の長編小説。同作を原作としたテレビドラマが今年2~4月に放映されたことを記念して出された限定版。小説のラスト以降のエピソードを描いた『굿나잇책방 겨울 통신(グッドナイト書店 冬通信)』もセットでの販売です。

3位:『아몬드(アーモンド)』ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2017.3.31)
韓国で40万部を突破し、世界13カ国で翻訳出版されているベストセラー。今年4月には邦訳本(祥伝社/矢島暁子訳)がアジア圏の作品では初めて「2020年本屋大賞」翻訳小説部門の1位に輝くなど、日本でも注目を集めています。

4位:『우리가 빛의 속도로 갈 수 없다면(私たちが光の速度で行けないならば)』キム・チョヨプ著(ホブル/2019.6.24)
昨年の「今日の作家賞」(民音社)に続き、今年「若い作家賞」(文学トンネ)を受賞した注目の新人SF作家による初の小説集。朝鮮日報、東亜日報、アラジン、Yes24による「2019今年の本」にも選ばれ、出版から1年弱で10万部を突破しました。表題作は2017年の第2回韓国科学文学賞で佳作を受賞、同時に『관내분실(館内紛失)』で大賞とダブル受賞しました。著者は大学院で生化学を研究していたという経歴の持ち主。最近のインタビュー記事によると同書の日本での翻訳出版も決まったようです。

5位:『사서함 110호의 우편물(私書箱110号の郵便物)』イ・ドウ著(時空社/2016.3.18)
2004年の初出版から13周年となるのを記念して4年前に新たに出版されたロングセラーの長編小説。著者の『날씨가 좋으면 찾아가겠어요』がドラマ化され話題となり本書も再び注目を集めています。

6位:『일의 기쁨과 슬픔(仕事の喜びと悲しみ)』チャン・リュジン著(チャンビ/2019.10.25)
昨年、チャンビ新人小説賞を受賞した表題作は同社のウェブサイトに公開された直後から話題となり、累積アクセス数が40万件に上る爆発的な人気を得ました。審査委員から「短く機敏なジョブを繰り出す、軽いステップのボクサーを連想させる」などと評された表題作をはじめ、主に20~30代の会社員の日常を描いた計8篇が収録されています。

7位:『소설 보다: 봄 2020(小説 ポダ:春2020)』キム・ヘジン、チャン・リュジン、ハン・ジョンヒョン著(文学と知性社/2020.3.17)
同社が年4回「この季節の小説」を選んでHPに掲載したものを季節ごとに単行本として出版するシリーズです。同書は2019冬の「この季節の小説」に選ばれたキム・ヘジン、チャン・リュジン、ハン・ジョンヒョンによる3作品のほか、3人と選定委員によるインタビューも収録されています。

8位:『한중록(閑中録/恨中録)』恵慶宮洪氏著(文学トンネ/2010.8.28)
朝鮮21代王英祖の次男(思悼世子)の妃で22代王正祖の母である恵慶宮洪氏(ヘギョングンホンシ)が書いた自伝的回顧録。同社の韓国古典文学全集の1冊です。ロングセラー書をわかりやすく解説するテレビの教養番組で3月下旬に同書が取り上げられたことから再び注目を集めたようです。

9位:『체리새우: 비밀글입니다(シナヌマエビ:非公開文です)』ファン・ヨンミ著(文学トンネ/2019.1.28)
中学2年生の話者を通じて多感な世代の学校生活や心理がリアルに描きだされた作品。2018年の第9回文学トンネ青少年文学賞大賞を受賞しました。同社の青少年シリーズの1冊です。

10位:『소년이 온다(少年が来る)』ハン・ガン著(チャンビ/2014.5.19)
1980年5月18日に始まった光州事件から今年で40年。5月が近づき、事件をテーマにした同作も再び注目を集めています。邦訳本(クオン/井手俊作訳)も出ています。
(文/牧野美加)