教保文庫、10月の月間ベストと新刊(韓国通信)

教保文庫の10月の月間ベストセラー(国内小説)と注目の新刊をご紹介します。1位は映画が公開され再び注目を集めている『82年生まれ、キム・ジヨン』でした。

1位:『82년생 김지영(82年生まれ、キム・ジヨン)』 チョ・ナムジュ著(民音社/2016.10.14)
2位:『물 만난 물고기(水を得た魚)』イ・チャンヒョク著(スカ/2019.9.26)
9月の月間ベストセラーで9位にランクインした本作品。ミュージシャンのイ・チャンヒョクによる初の小説ですが、じわじわと人気を呼び、10月は2位に浮上しました。
3位:『아몬드(アーモンド)』ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2017.3.31)
4位:『빛의 과거(光の過去)』ウン・ヒギョン著(文学と知性社/2019.8.30)
5位:『직지(直指)1』キム・ジンミョン著(サムアンドパーカーズ/2019.8.1)
6位:『최선의 삶(最善の生)』イム・ソラ著(文学東莱/2015.7.17)
第14回中央新人文学賞詩部門に当選した著者による長編小説。15歳のころから繰り返し見ている悪夢についての物語で、第4回文学トンネ大学小説賞受賞作でもあります。最近、歌手のIUが同作を推薦したことや、同作を原作とした映画(20年公開予定)の主人公に歌手で女優のパン・ミナがキャスティングされたことで話題となりました。
7位:『천년의 질문(千年の質問) 1』チョ・ジョンネ著(ヘネム出版社/2019.6.11)
8位:『김승옥문학상 수상작품집(金承鈺文学賞受賞作品集/2019)』(文学トンネ/2019.9.27)
9位:『대도시의 사랑법(大都市の愛し方)』パク・サンヨン著(チャンビ/2019.6.28)
10位:『오직 한 사람의 차지(ただ一人だけのもの)』キム・グミ著(文学トンネ/2019.9.2)

新刊コーナーでは、民音社の쏜살문고(ソンサル文庫)シリーズの新しい3冊が目を引きました。ソンサルは射られた矢という意味で、同シリーズは1966年に設立された同社のロゴ「矢を射る人」の精神を受け継いだ叢書です。韓国の名作はもちろんのこと、谷崎潤一郎の『痴人の愛』など世界の名作の翻訳本など、2016年から60冊近く刊行されています。今回出たのは、74年に発表された朴婉緒(パク・ワンソ)の『이별의 김포공항(離別の金浦空港)』、57年に発表された康信哉(カン・シンジェ)の『해방촌 가는 길(解放村へ行く道)』、34年に発表された姜敬愛(カン・ギョンエ)の『소금(塩)』の3冊。表紙デザインも独特です。

1108ソンサル文庫

 

 

 

 

 

その他、以下のような新刊が並んでいました。

キム・スム著『나는 나무를 만질 수 있을까(私は木を触れるだろうか)』(文学トンネ/2019.10.30)には、李箱文学賞大賞受賞作の中編『뿌리 이야기(根の物語)』、97年の大田日報新春文芸当選作『느림에 대하여(遅いことについて)』を改作した表題作、文学トンネ新人賞受賞作『중세의 시간(中世の時間)』を改作した『슬픈 어항(悲しい漁港)』の3篇が収録されています。著作の『ひとり』は昨年、邦訳本(岡裕美訳/三一書房)が刊行されました。
チャ・ムジン著の『IN THE BAG』(Yoda/2019.11.8)は、純文学とジャンル文学の垣根を取り払い多様なジャンルの優れた作品を刊行する「Yoda Fiction」シリーズの第1作目。ディストピア的な終末世界で、幼い息子を連れてソウルから大邸まで行かねばならない若い男の物語を描いています。

キム・ヘジンの長編小説『9번의 일(9番の仕事)』(ハンギョレ出版社/2019.10.10)は、通信会社で長年、修理や補修業務を担当し、ある日突然、退職勧告を受けた「9番の男」を通して、「仕事」や「働く人」について描いています。著作の邦訳本は『娘について』(古川綾子訳/亜紀書房)のほか、新たに『中央駅』(生田美保訳/彩流社)が出ました。

1108キム・ヘジン

 

 

 

 

『アンダー、サンダー、テンダー』(吉川凪訳/クオン)、『フィフティー・ピープル』(斎藤真理子訳/亜紀書房)などの邦訳本があるチョン・セラン初の長編小説『덧니가 보고 싶어(八重歯が見たい)』。11年に刊行されたものを全面的に改訂し、表紙も新たに出版されました(ナンダ/2019.11.5)。

1108チョン・セラン

 

 

 

 

 

個性的な文章で知られるペ・スアの『멀리 있다 우루는 늦을 것이다(遠くにいる、ウルは遅れるだろう)』(work room press/2019.10.31)は、同社のシリーズ「입장들(立場)」の4作目。朗読劇に対する著者の関心が強く反映された、3部からなる小説。同社はイ・サンウ、チョン・ヨンムン、チョン・ジドン、ペ・スア、ハン・ユジュの5人を「work roomの韓国文学作家」に選び、このシリーズで順に作品を出版しています。

今年の東仁文学賞を受賞したチェ・スチョルの『독의 꽃(毒の花)』(作家精神/2019.5.14)。著者は中編小説『얼음의 도가니(氷のるつぼ)』で李箱文学賞を受賞したほか、尹東柱文学賞、金裕貞文学賞、金埈成文学賞などの受賞歴があります。(文・写真/牧野美加)
1108チェ・スチョル