教保文庫、9月の月間ベストと新刊(韓国通信)

 教保文庫の9月の月間ベストセラー(国内小説)と注目の新刊をご紹介します。月間ベストではウン・ヒギョンによる7年ぶりの長編が2位に入り、今月いよいよ映画が公開される『82年生まれ、キム・ジヨン』は5位に再浮上しました。

1位:『직지(直指)1』キム・ジンミョン著(サムアンドパーカーズ/2019.8.1)
2位:『빛의 과거(光の過去)』ウン・ヒギョン著(文学と知性社/2019.8.30)
他人への話しかけ』(安宇植訳/トランスビュー)や『美しさが僕をさげすむ』(呉永雅訳/クオン)などの邦訳本がある著者の7年ぶりとなる長編。友人の書いた小説を読みながら、主人公の中年女性が40年前の女子大の寮生活やルームメイトとの日々を回想します。
3位:『천년의 질문(千年の質問) 1』チョ・ジョンネ著(ヘネム出版社/2019.6.11)
4位:『아몬드(アーモンド)』ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2017.3.31)
5位:『82년생 김지영(82年生まれ、キム・ジヨン)』 チョ・ナムジュ著(民音社/2016.10.14)
6位:『오직 한 사람의 차지(ただ一人だけのもの)』キム・グミ著(文学トンネ/2019.9.2)
7位:『대도시의 사랑법(大都市の愛し方)』パク・サンヨン著(チャンビ/2019.6.28)
8位:『지구에서 한아뿐(地球でハナだけ)』(改訂版)チョン・セラン著(ナンダ/2019.7/31)
9位:『물 만난 물고기(水を得た魚)』イ・チャンヒョク著(スカ/2019.9.26)
実妹とポップスデュオ「楽童ミュージシャン」を結成し音楽活動をしているイ・チャンヒョクによる初の小説。同じく9月に発表したアルバム『航海』と共通する世界観が描かれています。
10位:『룬의 아이들 블러디드.2(ルーンの子供たち:BLOODED 2)』チョン・ミンヒ(エリクシール/2019.9.25)
オンラインゲーム『テイルズウィーバー』の原作にあたるファンタジー小説。本作は『ルーンの子供たち』シリーズ第3部にあたり、第1部<冬の剣1~7>と第2部<DEMONIC1~8>はすでに邦訳本が出ています(ともに酒井君二訳/宙出版)。

 新刊コーナーでは、月間ベスト2位にランクインした『光の過去』や、性暴力の被害に遭った女性イ・ジェヤの日記という形式で物語が展開するチェ・ジニョンの長編『이제야 언니에게(イ・ジェヤ オンニへ)』(チャンビ/2019.9.23)、「草花」などの詩で知られる詩人ナ・テジュのデビュー50周年を記念したエッセイ集『오늘도 네가 있어 마음속 꽃밭이다(今日も君がいるから心の中は花畑だ)』(ヨルリムォン/2019.9.26)、詩人イ・ビョンリュルの5年ぶりとなる散文集『혼자가 혼자에게(ひとりがひとりへ)』(タル/2019.9.19)』などが目を引きました。

 

 

 

 

 

 また、「既成世代」とはまったく異なる価値観を持つと言われる「90年代生まれの20代」について、その行動や思考の特性を解説する『90년생이 온다(90年世代がやって来る)』(イム・ホンテク著/whalebooks/2018.11.16)が、大々的に平積みにされていました。この本は、文在寅大統領が8月7日、「新しい世代を理解してこそ未来を準備することができる。彼らの悩みも解決できる。誰しも若い頃を経験しているが、私たちは今、20代のことをどれだけわかっているだろうか」というメッセージとともに大統領府の全職員に贈ったことから話題になりました。教保文庫の8月最終の週間ベストで総合分野1位、9月の月間ベストで同2位となるほど注目を集めています。

90年世代がやって来る

 文学賞の受賞作品集や、SF短編ワークショップの作品集も並んでいました。
김승옥문학상 수상작품집(金承鈺文学賞受賞作品集/2019)』(文学トンネ/2019.9.27)
大賞はユン・ソンヒの『어느 밤(ある夜)』、優秀賞にはクォン・ヨソン、ピョン・ヘヨン、チョ・ヘジン、ファン・ジョンウン、チェ・ウンミ、キム・グミの6人の作品が選ばれました。同文学賞は、登壇から10年以上の中堅作家の、昨年7月から今年6月までに発表された短編小説を対象としています。

 『이효석 문학상 수상작품집(李孝石文学賞受賞作品集/2019)』(センガクチョンゴジャン/2019.9.10)
大賞はチャン・ウンジンの『외진 곳(離れたところ)』、優秀作品賞にはキム・チョングァン、キム・チェウォン、ソン・ボミ、チョン・ソヒョン、チェ・ウニョン、クォン・ヨソンの6人の短編が選ばれました。

 『2019 제1회 폴라리스 선정작품집(2019第1回ポラリス選定作品集)』(アジャク/2019.9.25)
アマチュア作家対象の短編SFワークショップ「ポラリス」が今年上半期、出版社「アジャク」とストーリープロダクション「安全家屋」によって開催されました。ワークショップでは、「SFアワード」(国立果川科学館が2014年から主催している韓国初のSF賞)大賞受賞作家4人の助言、合評を受けながら参加者がSF短編小説を創作しました。この作品集にはその中から選ばれた7篇が収録されています。その7人の写真が掲載された7通りの表紙があり、初版本は直筆サイン入りです。(文・写真/牧野美加)