教保文庫、7月の月間ベスト(韓国通信)

教保文庫の7月の月間ベストセラー(国内小説)をご紹介します。

1位:『천년의 질문(千年の質問) 1』チョ・ジョンネ著(ヘネム出版社/2019.6.11)

朝鮮半島の現代史を描き、高い評価を得た大河小説『太白山脈』(邦訳版全10巻は、筒井真樹子、神谷丹路ほかの訳により、ホーム社から刊行)の著者による長編小説。「国民にとって国家とは何か」、「国家をのみこんでしまった権力の核心にはいったい何があるのか」という問いに対する答えを、韓国の現状を洞察することで導き出します。
6月に行われたソウル国際ブックフェアでは、本書全3巻のオブジェが人々の目に留まっていました。

千年の質問

千年の質問

2位:『아몬드(アーモンド)』ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2017.3.31)

感情を司る偏桃体(アーモンド)が人より小さいために怒りなどの感情をうまく表現できないユンジェをはじめ、それぞれ異なる理由で世間から疎外される少年少女たち。彼らを取り巻く人々や環境の変化を通して、本当の幸せとは何かを探っていきます。矢島暁子さんによる邦訳本(祥伝社)は発売後、半月ほどで重版が決まるなど好評を得ています。

アーモンド

アーモンド邦訳版

 

3位:『진이, 지니(ジニ、ジニ)』チョン・ユジョン著(ウネンナム/2019.5.27)

“ミステリーの女王”チョン・ユジョンの3年ぶりの新作長編で、これまでとは雰囲気の違うファンタジー小説です。人類にもっとも近いDNAを持つ霊長類ボノボと霊長類研究センターの飼育員の交流を描きます。

ジニジニ

 

 

 

 

4位:『직지(直指)1』キム・ジンミョン著(サムアンドパーカーズ/2019.8.1)

世界最古の金属活字本とされる『直指心体要節』(高麗の禅僧・白雲和尚景閑が1372年に著した仏教の書籍)とグーテンベルクの金属活字を巡る、中世の謎を追跡した長編ミステリー小説。全2巻。

直指

 

 

 

 

5位:『대도시의 사랑법(大都市の愛し方)』パク・サンヨン著(チャンビ/2019.6.28)

発表と同時に話題となった4篇の中短編からなる連作クィア小説。第10回若い作家賞大賞を受賞した「우럭 한점 우주의 맛(クロソイ一切れ、宇宙の味)」は、5年前に愛し合っていた男性から、末期がんの母親の看病中に手紙を受け取り、再び心が揺れる主人公の物語を描きます。

大都市の愛し方

 

 

 

 

6位:『페인트(ペイント)』イ・ヒヨン著(チャンビ/2019.4.19)

国がセンターを設立し、子どもを育てる養育共同体が実現した未来が舞台のヤングアダルト長編小説。10代の子どもたちが自ら面接をして親を選ぶ社会が描かれます。いい親とは、家族の意味とは何かを問いかけます。タイトルのペイントは「Parent’s interview(親の面接)」を指す小説の中の隠語です。審査委員全員の圧倒的な支持を受け、第12回チャンビ青少年文学賞を受賞した作品です。

ペイント

 

 

 

 

7位:『10 젊은작가상 수상작품집(10回若作家賞受賞作品集(2019)』(文学トンネ/2019.4.5)

大賞を受賞したパク・サンヨンの『우럭 한 점 우주의 맛 (クロソイひと切れ、宇宙の味)』をはじめ、キム・ヒソン、ペク・スリン、イ・ジュラン、チョン・ヨンス、キム・ボンゴン、イ・ミサンの計7人の作品が収録されています。

 

 

 

 

8位:『사하맨션(サハマンション)』チョ・ナムジュ著(民音社/2019.5.28)

ディストピアや社会の不条理さ、社会的弱者・少数者、差別などがテーマとなっています。物語の舞台は、ある企業が都市を買い取って本国から独立した都市国家「タウン」。一定の経済力と専門能力を満たす者だけに住民権が与えられます。そこで生活する、タウンにも本国にも属さない人々「サハ」の姿を描きます。

 

 

 

 

9位:『82년생 김지영(82年生まれ、キム・ジヨン)』 チョ・ナムジュ著(民音社/2016.10.14)

日本でも異例のヒットを記録して13万部を突破。この勢いは留まるところを知りません。8月31日には著者のチョ・ナムジュさんが再来日し、斎藤真理子さんとの対談イベントが同志社大学 今出川キャンパスで開催されます。詳細は、駐大阪韓国文化院のオフィシャルサイトでご確認ください。

82

82年日本語

 

10位:『산 자들(生きる者たち)』チャン・ガンミョン著(民音社/2019.6.21)

刊行後すぐに爆発的にヒットした『한국이 싫어서(韓国が嫌で)』の著者チャン・ガンミョンによる連作小説。2015年以降に発表した短編10篇が収載されており、就職、解雇、リストラ、自営業などをモチーフに、韓国社会の労働の現実や、そうした現実を生み出す経済構造を赤裸々に語っています。

(文/牧野美加・五十嵐真希)