教保文庫、4月の月間ベストと新刊(韓国通信)

教保文庫の4月の月間ベストセラー(国内小説)と注目の新刊をご紹介します。

1位:『10 젊은작가상 수상작품(10回若作家賞受賞作品集(2019)』(文学トンネ/2019.4.5)

大賞を受賞したパク・サンヨンの『우럭 한 점 우주의 맛 (クロソイひと切れ、宇宙の味)』をはじめ、キム・ヒソン、ペク・スリン、イ・ジュラン、チョン・ヨンス、キム・ボンゴン、イ・ミサンの計7人の作品が収録されています。

2位:『아몬드(アーモンド)』ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2017.3.31) 

3位:『위저드 베이커리(ウィザード・ベーカリー)』(ハードカバー)ク・ビョンモ著(チャンビ/2014.2.10)

第2回チャンビ青少年文学賞を受賞した長編小説。父親の再婚相手からいじめを受けている少年が家の中での居場所を失って、パン屋に救いを求めます。一見ふつうのパン屋ですが、そこでは人間たちの注文に応じて魔法のパンが作られていました。ミステリー、ホラー、ファンタジーの要素を兼ね備えたヤングアダルト小説。ソフトカバー版もあります。

4位:『82년생 김지영(82年生まれ/キム・ジヨン)』 チョ・ナムジュ著(民音社/2016.10.14) 

5位:『젊은작가상 수상작품집 10주년 특별판(若い作家賞受賞作品集10周年特別版)』 (文学トンネ/2019.4.5)

デビュー10年以内の作家の中から毎年7編の受賞作を選定してきた「若い作家賞」は今年で10周年。それを機に、第1~10回の受賞作家計43人に、第1~9回の受賞作計63編の中から3編ずつを推薦してもらい、もっとも推薦の多かった7編を1冊にまとめました。『夜の求愛』ピョン・ヘヨン、『水の中のゴライアス』キム・エラン、『暴雨』ソン・ボミ、『半分以上のハルオ』イ・ジャンウク、『上流には猛禽類』ファン・ジョンウン、『建築か革命か』チョン・ジドン、『湖―別の人』カン・ファギル、の7編です。

6位:『내게 무해한 사람(私に無害な人)』チェ・ウニョン著(文学トンネ/2018.6.30)

7位:『쇼코의 미소(ショウコの微笑)』チェ・ウニョン著(文学トンネ/2016.8.10)

8位:『소년이 온다(少年が来る)』ハン・ガン著(チャンビ/2014.5.19)

9位:『채식주의자(菜食主義者)』ハン・ガン著(チャンビ/2007.10.30)

10位:『그들의 첫 번째와 두 번째 고양이 2019년 제43회 이상문학상 작품집(彼らの最初と二番目の猫 2019年第43回李箱文学賞作品集)』(文学思想/2019.1.16)

新刊コーナーでは、黒地に鮮やかなレモンの絵が印象的な、クォン・ヨソンの4作目の長編小説『레몬(レモン)』(チャンビ/2019.4.30)が目を引いていました。2016年に発表した作品『당신이 알지 못하나이다(あなたが分からなかったのでございます)』に手を加えたもので、17年には舞台化もされました。2002年夏、FIFAワールドカップの直後に女子高生が殺害された事件と、事件を取り巻く人物たちの生きざまを描いています。

ピョン・ヘヨンの短編集『소년이로(少年易老)』(文学と知性社/2019.4.29)は、現代文学賞を受賞した表題作をはじめ、米国の時事週刊誌『The New Yorker』に掲載された『식물 애호(植物愛好)』など8編を収録しています。

赤ずきんちゃんをモチーフにしたキム・ジヨンのミステリースリラー『빨간 모자(赤い帽子)』(GOZKNOCK ENT)は、同社の「Kスリラー」シリーズ第10弾となる作品。同シリーズの『시스터』(イ・ドゥオン著)は、『あの子はもういない』というタイトルで邦訳も出ています(小西直子訳/文藝春秋)。

詩人アン・ドヒョンの『남방큰돌고래(ミナミハンドウイルカ)』(Human & Books/2019.4.30)は、不法に捕獲されたあと自由を取り戻した若きミナミハンドウイルカをモデルにした「大人のための童話」です。著者の邦訳作品として、詩集『蝉氷』(韓成礼訳/書肆青樹社)、童話『幸せのねむる川』(藤田優里子訳/青春出版社)、エッセイ集『小さく、低く、ゆっくりと』(韓成礼訳/書肆侃侃房)などがあります。

1980年5月の光州事件をモチーフにしたソン・ドンユンの長編小説『5월18일생(5月18日生まれ)』(スターブックス/2019.5)や、2014年4月のセウォル号沈没事故の遺族の声をまとめた『그날이 우리의 창을 두으렸다(あの日が私たちの窓を叩いた)』(チャンビ/2019.4.10)など、4月や5月に起きた事件・事故に関する新刊も目立ちました。

20190511新刊コーナー

20190511セウォル号

 

 

 

 

 

 

教保文庫が推薦する「今月の本」(5月)コーナーには、『天女銭湯』『天女母さん』『あめだま』(いずれも長谷川義史訳/ブロンズ新社)などでおなじみのペク・ヒナの新作『나는 개다(ぼくはいぬだ)』も並んでいました。

20190511今月の本

 

 

 

 

 

 

前回ご紹介したキム・フンの『연필로 쓰기(鉛筆で書くこと)』が、独立したコーナーで大きく取り上げられていて、著者の直筆原稿や筆記具、インタビュー動画などが紹介されていました。(文・写真/牧野美加)

20190511キム・フン3

20190511キム・フン2