工場の面影残すリノベ書店「Yes24」(韓国通信)

最近、古い建物を再利用したリノベカフェが日本でも韓国でも人気ですが、釜山には、工場だった建物が大型書店やカフェ、展示空間などが入る施設に変身した例があります。その名も「F1963」。もとはワイヤーを製造していた「高麗製鋼(現Kiswire)」の工場で、名前はFactoryの「F」と工場の設立年から取ったそうです。2008年に生産を中止し、設備は移転。その後は倉庫として使われていましたが、やがてその役目も終え、14年に美術展覧会「釜山ビエンナーレ」の会場となったのを機に、16年に複合文化空間へと生まれ変わりました。コンサートホールやアートの展示会場として使用するホールのほか、平昌冬季五輪が開催された江陵市に本店がある人気カフェ「TERAROSA」、マッコリレストラン「福順都家(ポクスンドガ)」、チェコビールが飲める「PRAHA 993」などが入っています。いずれも、ワイヤーを巻きつける巨大なボビンや鉄板などがインテリアとして活用され、工場だったころの面影を残しています。

このF1963内に大型の中古書店「Yes24」がオープンしたのは昨年9月。広さは約600坪と、韓国の中古書店では最大規模を誇ります。Yes24はもともとオンライン書店としてスタートし、16年からオフライン書店も開設。現在、ソウルに3カ所、釜山に2カ所の店舗があります。

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ここYes24水営店では、広大な空間を活かして、膨大な数の中古本が分野別にゆったりと配置され、腰かけて本を読めるように椅子も用意されています。高い天井付近には工場の鉄骨がそのまま使われ、独特な雰囲気をかもし出しています。中古書店というより、おしゃれなギャラリーを思わせるような空間です。

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細長い売り場を奥へ進んでいくと、TERAROSA本体とは別のカウンターがあり、ここでもおいしいコーヒーを飲みながら読書が楽しめます。テーブルには昔のハングルの銅版が埋め込まれ、書店らしさが感じられます。さらにその奥の児童書コーナーは、子どもの目線に合わせて本棚を低くしてあり、ソファもたくさんあります。目を引くのは一番奥の巨大な本棚。靴を脱いで、床に座ってのんびりと読書を楽しむことができます。2階には漫画本コーナーも。

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広い空間を活用して、出版記念講演会など様々なイベントも開催されます。本以外にもCDやDVD、「本に振りかける香水」などのユニークな商品を販売しているほか、本の買い取りも受け付けています。

F1963の敷地内にある孟宗竹の林を歩いてみるのもおすすめです。強くしなやかで、しっかりと重心を保つ竹のように、まっすぐ正直に、困難なときもワイヤー製造一筋に歩んできたKiswireの企業精神が、この竹林に込められているそうです。竹林の地面には、工場の床に使われていたコンクリートを切り出したものが埋め込まれています。また、F1963と渡り廊下でつながるKiswire本社内の「高麗製鋼記念館(Kiswire Museum)」には、ワイヤーの製造過程や製品模型が展示されています(無料)。自動車やピアノ、世界各国の橋など、様々な用途で使われていることが分かります。

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(文/写真:牧野美加)

Yes24水営店F1963
営業時間:11~20時(土日祝は21時まで)
住所:釜山市水営区鴎楽路123番ギル20 (水営区望美洞475-1)
TEL. +82-1566-4295