【K-BOOK振興会だより】2025年もまだまだ勢いを増すK-BOOKをどうぞよろしくお願いします

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K-BOOK振興会便り  2025年1月号        http://k-book.org/
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ハン・ガンのノーベル文学賞受賞に大きく湧いた2024年でしたが、
2025年もこの興奮は続きそうです。
今年、韓国の出版界では、小説ではハン・ガン、キム・エラン、チョン・セラン、
ファン・ソギョンが、詩集ではパク・ジュン、アン・ドヒョンが作品を出版する予定とのこと。
K-BOOK振興会のサイトでも新作を紹介していきます。
本年もどうぞよろしくお願い致します。(運営委員:五十嵐真希

◆◇今月のTOPIK◇◆

●イベント情報●
1月10日(金)から12日(日):【共同書庫/会場】
「韓国・〇〇・日本を読む」
(1/10)『日常の言葉たち』を日本語で書いてみる
(1/11)散歩する読書会「京都、ファサード」(ハン・ガン著)
https://note.com/kyodosyoko/n/nb9d79865b651?sub_rt=share_sb

1月25日(土):【仙六屋カフェ/会場】
韓国文学の雑談
ゲスト:斎藤真理子×古川綾子
https://x.com/youyousha_books/status/1867742981643809281

1月29日(水):【朝日カルチャーセンター/会場+オンライン】
ノーベル賞作家ハン・ガン作品の魅力
日本語と韓国語であじわう
講師:古川綾子
https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=7712802

◆◇日本語で読みたい韓国の本◇◆

人文 『こんなに優しい個人主義者(이토록 다정한 개인주의자)』
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●「自由」と「配慮」のバランスを探る倫理的ガイドブック

現代社会においては、個人の自由と他者への配慮が対立する場面が増えている。
著者は、こうした社会の摩擦は単なる個人間の問題ではなく、倫理や価値観の再考を迫るものであると指摘する。
さらに、SNSやインターネット上での過激な意見対立が社会全体の不安や怒りを増幅させる現状にも目を向け、
倫理的な判断や共存のための態度の必要性が増していると説く。
高速バスで背もたれを倒し過ぎて起きるトラブルなど日常の些細な問題から、高齢者嫌悪や人種差別、環境問題などの深刻なテーマまで、
古代ギリシャのプラトンから現代のマイケル・サンデルに至る思想家たちの知見をもとに、多角的な視点を提供する。
理論の単なる羅列にとどまらず、現実の問題に即した論理的な考え方を提示しているので、
「個人主義」を大切にしながらも、他者と調和して生きる「優しい個人主義者」としての生き方を学べる。混迷する時代に希望と指針を与える一冊といえる。
https://k-book.org/yomitai/241202/

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小説 『光が導くところへ(빛이 이끄는 곳으로)』
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●人気建築家ペク・ヒソンのミステリー作品

パリの建築事務所で働くルミエールの元に、高級住宅地であるシテ島に格安物件があるという連絡が入る。
古く立派なその邸宅は普通のサラリーマンには到底手の出せないものだったが、自分が建築家であることから選ばれ、
スイスのルツェルンに入院中の家主に会いに行くことが購入の条件だった。
早々休暇を取ってルツェルンに向かうと、家主ピーターが入院中の療養型病院は、中世の修道院を改築した建物で父親が設計したものだった。
その美しさに魅了され建築家としての好奇心も手伝って、ピーターの望み通り建物に隠された秘密を探ることになる。
到着した日に太陽の光が織りなす美しい光景を目にしたルミエールは、光の導くところをヒントにピーターの父親とその愛人が記した日記帳を見つける。
パリに戻ったルミエールは、病院の謎を解き日記を見つけてくれたお礼に、無料でシテ島の邸宅を譲るという連絡をもらう。
その邸宅でもピーターと父親、愛人と思われた女性についての秘密を明らかにしたルミエールは、再びルツェルンに向かい、
ピーターに真相を話して父親の遺言通りシテ島の邸宅に引っ越すように勧める。
15年後、シテ島の邸宅にはピーターと娘家族が暮らしていた。久しぶりの訪問で最後の謎も解き明かされる。
https://k-book.org/yomitai/241209/

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エッセイ 『今日のことばの種(오늘의 말씨)』
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●スピーチクリエイターによる美しく話すコツ

会話をしていて、意図せず相手を傷つけてしまったことはありませんか? 温かな内面を持っていても、話し方次第で相手を傷つけてしまうこともあります。
この本は、スピーチクリエイターとして活動する著者が自身の体験を通じて身につけた、
美しく話すコツ、声の出し方、イントネーションや対話の技術などを教えてくれます。
話し方だけでなく肯定的な言葉を発するための考え方、誠実に話すことで周りを照らす照明のような人になることなど、
内面もポジティブに成長できる内容になっています。否定的に考えるより、肯定的に考えることがどれほど人生を広げてくれるかを語り、
前向きになれるような言葉をかけてくれます。
「お母さん、僕たちいちばん最後に降りるんだよね?」
「違うよ、私たちはいちばん高いところに向かっているんだよ」
著者がエレベーターで出会った親子の会話が、相手のためにどれだけ誠実に話すのかが重要だと教えてくれました
https://k-book.org/yomitai/241216/

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エッセイ『ある動詞の絶滅〜消えゆく職業の備忘録〜(어떤 동사의 멸종 사라지는 직업들의 비망록)』
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●労働エッセイ作家ハン・スンテによる消えゆく職業の備忘録

労働エッセイ作家のハン・スンテの3作目の本である。2作目の『肉に生まれて』で第59回韓国出版文化賞(教養部門)を受賞した著者が
今回は消えていく職業の場面を記録した。色々な媒体で指摘している、
技術の発達で代替される可能性が高い職業の中でも著者自身が体験した4つの仕事、コールセンター、宅配分類、バイキングのキッチン、
ビルの清掃のもしかして最後かもしれない姿を卓越な観察力で述べている。
著者はこの4つの仕事をまた「電話する」、「運搬する」、「料理する」、「清掃する」の動詞で表現し、
まだはっきりと存在する仕事を必死でしている彼自身や仲間の姿を生々しく表現している。
https://k-book.org/yomitai/241223/

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◆◇日本語で読める韓国の本◇◆

『偶像の涙』(全商国著、金子博昭訳、クオン)
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第7回「日本語で読みたい韓国の本」翻訳コンクールで、『夏にあたしたちが食べるもの』とともに
最優秀賞受賞となった金子博昭さん訳の『偶像の涙』(全商国著、クオン)。
ことあるごとに暴力で周囲を威圧する不良グループのリーダー・ギピョ、クラスの秩序を保とうとする担任教師、そして級長ヒョンウ。
各者の対立と葛藤を、気が利いてそつの無いユデの視点で語っていきます。
1980年に発表され、1982年には映画化にもなった本作は、ある高校で起きた出来事を素材にしたアイロニカルな物語。
修学能力試験(韓国の大学入学共通テスト)に出題されたこともあり、韓国の人たちにとってとても有名な作品です。
訳者の金子博昭さんからメッセージを頂戴しました。
https://k-book.org/yomeru/20241207/

『はじめまして、ムンゲです。』(yeye 著 / 菅原 光沙紀 訳 / PHP研究所)
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パッと目を惹くイラストの表紙も魅力的な『はじめまして、ムンゲです。-一匹の家族が教えてくれた、人生で大切なこと』。
韓国でもベストセラーとなったイラストエッセイが日本に初登場となりました。
新しい家族となった犬のムンゲとの暮らしが可愛いらしいイラストとともに、短い文章で綴られていますが、その一言一言に癒されたり、
クスっと笑ったりしながら、気が付けばほっこりと温かい気持ちが胸いっぱいに広がっています
冬の寒いこの時期にとても素敵な一冊になりそうです。訳者の菅原 光沙紀さんからメッセージを頂戴しました。
https://k-book.org/yomeru/241212/

『妖怪島のレストラン 1 迷いこんだ少女』(キム・ミンジョン 著 / 山岸 由佳 訳 / 評論社)
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みんな大好き「妖怪」の物語。
オッドアイの神秘的な猫にさそわれるように、奇怪な世界に足を踏み入れた15歳の少女シア。
桜が満開にさきほこり、ホタルが舞う幻想的で美しいその場所は、なんと妖怪たちが人間から遠く離れてくらすためにつくられた妖怪島だった・・・
韓国ではWeb掲載で大人気を博し、読者の熱い要望で書籍化された一冊がついに日本語版で登場。
Kファンタジーの世界感にどっぷりと浸ってみませんか⁉
訳者の山岸由佳さんからメッセージを頂戴しました。
https://k-book.org/yomeru/241224/

◆◇ 韓国の出版・本屋事情 ◇◆

教保文庫、11月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)
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。11月もハン・ガンの勢いはとまらずランキングの上位を独占しました。
注目の新刊では近年活躍がめざましい新世代SF作家の一人チョン・ソンランの新作と、
海外で評価の高いベテラン作家ペ・スアによる長編小説を取り上げています。
https://k-book.org/publishing/20241208/

教保文庫、11月の月間ベストと注目の新刊(エッセイ)
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『日常の言葉たち』(牧野美加訳、葉々社、2024年)、『子どもという世界』(オ・ヨ ンア訳、かんき出版、2003年)など
邦訳書も出版されている著者による「大人」についてのエッセイが10位にランクインしました。
注目の近刊では、60歳を過ぎ、「人生の第二幕」について考えるためのエッセイを紹介しました。
https://k-book.org/publishing/202412070202/

◆◇12月のK-BOOKらじお◇◆

#126  #kbookfes 2024に寄せられた感想でその熱気をお届け|これ、読みました
http://k-book.org/news/radio_126/

#127 『土地』全20巻、700人の登場人物、約10年を経て完訳!ー吉川凪さん、清水知佐子さん|わたし、これ訳しました
http://k-book.org/news/radio_127/

#128 ミステリー大好き担当者が手掛けた不思議なストーリー満載の短編集『光っていません』|わたし、これ担当しました
http://k-book.org/news/radio_128/

#129 ハン・ガンさんの短編にもノックアウトされました-啓文社コア福山西店|わたし、これ推してます
http://k-book.org/news/radio_129/

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韓国の本=K-BOOKを愛する皆さんに、日本で刊行された翻訳本の新刊情報やイベント情報、韓国現地からの情報、
そして読者の皆さんの声をご紹介するインターネットラジオ「K-BOOKらじお」は、Apple Podcast、Spotify、YouTubeで毎週金曜日 朝9時配信中!
Google Podcastでの配信もスタートしました。
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<ミニコラム:五十嵐真希の小さな翻訳恋物語>

今月からミニコラムを始めます。
本を翻訳して出版するとき、思っていた以上に長い付き合いになります。
原文を読んで訳し、時には学んで訳し、時には調査に没頭し、
推敲を重ねて 仕上がった訳稿を編集者にお送りし、ゲラになり、校正し……。
校閲者のご指摘に驚いたり感心したり。
原著に、原文に、調べ物に恋をしなければ、この過程を乗りきることはできません。
このコラムでは、私が恋をした原文やトピック、出来事などを綴っていきます。
まずはご挨拶まで。どうぞよろしくお願い致します。

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発行:一般社団法人 K-BOOK振興会
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