【K-BOOK振興会便り】教保文庫、2021年の年間ベストと注目の新刊は?

※このメールは、K-BOOK振興会からお送りしています。

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K-BOOK振興会便り  2022年2月号
http://k-book.org/
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長らく休止しておりましたK-BOOK振興会のメールマガジンを再開いたします。
毎月5日頃を目安にお送りいたします。

◆◇今月のTOPIK◇◆

●2月25日(金)現場の編集者たちの声を聞こう―「翻訳者」に求められるものとは?-
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「韓日翻訳者育成プログラム」の2回目は、イースト・プレスの黒田千穂さん、岩波書店・須藤建さん、
祥伝社・中川美津帆さんをお招きして、編集者の立場から「翻訳者」の方に求めたいこと、
編集者と翻訳者の関係についてなどお話いただきます。
ナビゲーターは斉藤典貴さん(亜紀書房)
http://k-book.org/news/2022-translator-train/

※過去回をお申込みいただきますと、録画URLでご覧いただけます

◆◇日本語で読みたい韓国の本◇◆

小説 『コスモスを殺した(코스모스를 죽였다)』
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●介護殺人を題材にした交換日記形式の小説

新聞記者である著者ユン・ヒイルは東京特派員として日本に滞在中、認知症患者や介護殺人について長期間にわたり取材した。
介護と介護の裏に潜む様々な問題を世に知らしめるために書いた小説。交換日記の形式をとる。
日本では珍しくなくなった認知症を扱う介護小説が、お隣の国ではどのように描かれているか、
そんな視点で読むこともできる。認知症になった妻を献身的に介護した末に共にあの世へ旅立とうとする夫の姿は、
韓流ドラマのように、日本の女性たちの心を揺さぶるだろう。

コスモスを殺した(코스모스를 죽였다)

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人文 『コーヒーの世界史+韓国珈琲史(커피세계사+한국가배사)』
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●K-pop, K-drama, K-foodに続く韓国独自のコーヒー文化を心ゆくまで味わえる1冊!

本書は著者イ・ギルサンの素朴な疑問から始まった。なぜコーヒーの歴史には生産者ではなく、消費する白人の話しかないのか。
なぜ、我々の視点から書かれたコーヒーの歴史本はないのか。なぜ韓国人はこんなにもコーヒー好きになったのか、など。
つまり、本書はその疑問に著者自らが答えを見つけにいった長い旅の結果物だと言える。

1部・2部では膨大な資料をベースに、生産国と主に欧米消費国内の歴史的出来事や状況を整理し、
3部・4部では韓国でのコーヒーの登場から現在に至るまでの歴史と文化を丁寧にまとめる。

特にコーヒーの起源、製法だけに留まらず、コーヒー文化そのものに関する内容が多く、
知識と面白さ両方を一度に手にいれることのできるずっしり内容の詰まった1冊になっている。

コーヒーの世界史+韓国珈琲史(커피세계사+한국가배사)

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エッセイ 『寒く暑い家(춥고 더운 우리 집)』
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●「家」が私たちにもたらしてくれるものとは?

主に社会的弱者に焦点を当てた作品を数々執筆してきた著者コン・ソノク(邦訳作品、カン・バンファ訳「私の生のアリバイ」)による、
自身の「家」にまつわるエピソードを集めた散文集。
著者は谷城(コクソン)、光州(クァンジュ)、麗水(ヨス)、春川(チュンチョン)や、ドイツ・ベルリンなど国内外を転々としていた。
最終的には、残りの人生を過ごすための「家」を求めて潭陽(タミャン)郡スボクへと移ったが、どの家にも思い出がある。
「家」の話でありながらそれはまた著者の人生の話でもあるようだ。

1部と2部では著者が過去に住んでいた「家」、3部には現在住んでいる潭陽郡スボクの「家」にまつわる話が計28編収録されている。

寒く暑い家(춥고 더운 우리 집)

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YA小説 『2メートル、そして48時間(2미터 그리고 48시간)』
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●「共感」をテーマとしたYA小説

本書はか弱い存在にスポットを当て、読者に勇気を与える作品を描くことに定評のあるユ・ウンシルによるYA小説。
著者自身がバセドウ病を患った経験をもとに、バセドウ病と闘う高校生の姿を描く。
タイトルにある「2メートル」という距離は、世界中で新型コロナウイルスが拡大してから嫌というほど意識させられてきた他人との距離でもある。
実際に本書は2018年に出版されたが、コロナ禍の韓国でSNSを中心に再び話題を集めている。

中学一年生のときバセドウ病と診断されたヨヌは、病気のせいで日々変わりゆく外見や周囲の偏見の目に苦しめられるが、
その胸の内を打ち明けられる相手は誰もいない。
数年間、薬物治療を続けるがあまり効果は見られず医師の勧めで放射線を使用した治療を受けることになる。
治療後は被ばくの可能性があるため、48時間、周囲と2メートル以上の距離を取ることを余儀なくされる。
息をするだけで周りを被ばくさせてしまうかもしれないという漠然とした不安と孤独感から逃げるように隔離場所へと向かうヨヌだが、
そこで自分を支えてくれる人びとの存在を改めて意識し、一人ではなかったことに気付く。
そして今後も病気に向き合うことを静かに誓うのであった。

2メートル、そして48時間(2미터 그리고 48시간)


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◆◇日本語で読める韓国の本◇◆

『オルガンのあった場所』(シン・ギョンスク/著、きむ ふな/訳、クオン)
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韓国の現代作家を代表し、作品が出るたびに人気を博するシン・ギョンスクさんの短編集『オルガンのあった場所』
(きむ ふな訳、クオン)。別れた彼のことを忘れるために何通もの手紙を書く主人公の不思議な体験を描いた「庭に関する短い話」、
許されない恋の相手との逃避行を目前にして、揺れる気持ちを幼い頃の思い出とともに手紙に綴る表題作の「オルガンのあった場所」、
入院中の老父を介護する主人公が職場の女性に手紙を綴る「ジャガイモを食べる人たち」など7編の物語が収録されています。
どの別れもつらくて悲しいのですが、四季折々の自然の描写や暮らしのささやかな場面の描写がとても美しく、切ない余韻が心に広がります。
「これらの作品から悲しみではなく美しさを発見されることを願っています」と語る作家の言葉どおり、美しさが詰まった短編集です。
訳者のきむふなさんによるメッセージをご紹介しました。

『オルガンのあった場所』(シン・ギョンスク/著、きむ ふな/訳、クオン)

◆◇ 韓国の出版・本屋事情 ◇◆

◆教保文庫、2021年の年間ベストと注目の新刊(韓国通信)

年間の1位と2位は、『ダラグート 夢の百貨店』の1、2巻。
注目の新刊は、次々と本が出版されるキム・チョヨプの初SFホラー『ムレモサ』、
詩人パク・ジュンのエッセイ集『季節のエッセイ』など。

教保文庫、2021年の年間ベストと注目の新刊(韓国通信)

__おしまいに__________________________

韓国出版文化産業振興院(KPIPA)から2022年の助成案内が発表されました。
2021年11月1日から2022年10月31日までに刊行された/刊行される本が対象です。
応募開始は2月9日から。
ご関心のある出版社の皆様、ぜひ募集要項をご覧ください。
詳細はこちらから
https://www.kbook-eng.or.kr/sub/info.php?ptype=view&idx=897&code=info&category=75

(運営委員:五十嵐真希)

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